職業養成学校での中学生活
防衛大臣の佐藤さんの依頼でダンジョンを攻略したが、一応世間的にはアレが世界で初めてのダンジョン攻略と言うことになっているらしい。
本当は、中越地震のあの時が最初なんだけど。
兎も角俺はそのダンジョン攻略の実績を持って表彰されることになり、新聞に顔も載せられてしまったが、それで俺の生活が大きく変わる――なんてことはなかった。
うん。まぁ、夏休み初日のダンジョン攻略のせいで世界中に名前が知れ渡ってしまったし、顔がバレたところで今更である。
寧ろ、聞くところによれば俺ではない『さとうやすし』さんが行方不明になる事件が激減したらしい。
……って言うか、俺じゃないさとうやすしさん、問題に巻き込まれてたのか。
いや、そりゃ巻き込まれるか。
俺も、滅多に外に出ないのに外国のエージェントや日本国内の政治家・反社会団体など様々な人たちにちょっかいをかけられては、その度に威圧で追い払ってきたし。
そんなことなら、顔出しくらいもっと早めにしておくべきだった。
俺が悪いわけじゃないけど、少しだけ申し訳ない気持ちになる。
だからといって、佐藤さんの言っていたようなメディアに出て活発的に活動したいかと言えばそう言う訳じゃないけど。
寧ろ、いちかちゃんといちゃいちゃしたり、鍛錬したりする時間が減っちゃうから絶対嫌だけど。
まぁ、ダンジョンを攻略した際に賞状を貰うくらいはしても良いだろう。
そんなこんなで、俺は中学二年生に進級した。
他のクラスは知らないけど、特別クラスはクラス替えは特になし。三学期抜ける人はいなかったので、転校生も特になし。
いても、精々他クラスから繰り上がる程度である。
変わったことと言えば、日本の法律がいくつか変わったらしい。
俺は法律の専門家じゃないし詳しくは知らないけど、職業やスキルに関する法律が新たに設立された感じだった。
例えば職業やスキルの力を悪用した犯罪は普通の犯罪よりも厳罰化される、とか。逆に職業やスキルを世のために使おうとする人は、優遇される(援助金が出たり、国家資格の受験料が半額になったり、減税措置が執られたり)とか。
後はダンジョンの管理に関する法律とか。
職業持ちやスキル持ちがダンジョンを探索、攻略することに関する、あるいはそれを依頼することに関する事項が整備されたりとか。
あと、ダンジョンの探索・攻略の依頼を受けられるのは中学生以上と言うことになったらしい。
バイトがOKになる高校生じゃなくて中学生なのは、作為を感じる。と言うか、絶対俺に依頼を出すためにそう決まったと確信した。
その証拠であるように、環境省なり総務省なり国防総省なりからダンジョン攻略の依頼がバンバン出されるようになった。
どれもこれも生態系に害を及ぼしかねない場所に出現していたり、市街地にあって早急な対応が求められていたりの依頼ばかりで、依頼料も300万とか500万とかザラだった。
しかもその依頼の数もスゴく多い。
30や40じゃ効かないが、流石に全部を受ける気にはならなかったので、旅行してみたかった土地にあるダンジョンと近場のダンジョンを重点的に熟すことにした。
まぁ、その気になれば分身とかカナヘビのダンジョンから生成されるレベル999のモンスターを駆使して依頼どころか世界中にあるダンジョンをまとめて攻略出来る自身はあるけど、そんなことをすれば新聞に載るどころじゃ済まないだろう。
最近ではダンジョンから出た魔石を新エネルギーとして利用しよう! とか、低レベルなダンジョンの魔物を駆除して農作業をしよう! とか、色んな取り組みが成されているみたいだし、全部潰せば色んな方面から恨みを買いそうである。
それに、今のところダンジョンからモンスターがあふれ出て被害が出たと聞いたこともないし、そう急く必要も感じない。
そんな感じで、大体二週間から一ヶ月に一度のペースでのんびりとダンジョンを攻略しながら、
ダンジョンで回収した魔石の他に俺のアイテムボックスの肥やしになっている魔石の中でも特に弱めの魔石を売りに出したりしていた。
攻略、調査だけでも十分な金銭が出ているのに、その上で魔石とか魔物が落としたアイテムなども別途料金で買ってくれるので、スゴい勢いでお金が貯まっていった。
それこそ、一年が経ち中学三年生に進級する頃には貯金が七億円くらいに膨れあがっていた。
す、スゴい大金だ……。でも、使い道が思いつかない!!
欲しいものは大体、自分のダンジョンとかいちかちゃんの魔法なり錬金なりで手に入るし。と言うか、俺が欲しいものって思いっきり運動できる場所と、いちかちゃんとの幸せな時間くらいだからそんなにお金が掛らないし。
かといって、慈善団体に寄付するのも……なんかこう、俺がすると完全な偽善行為でしかないのだ。
それこそ、慈善事業したいなら寄付なんかするよりも俺が直接現地に行ってなんやかんやした方が意味があると思うし。でも、俺が直接行って助けたいかと問われればそう言った心意気があるわけでもないし。
やるってなったら色々大変そうだから、やってないし。
と言うわけで、使わないお金はいちかちゃんと相談して……一億円くらい残して、残りは全部企業に投資することにした。
今度の人生でお世話になっている安くて美味しいプロテインのメーカーとか、良いタオルを作ってくれる繊維メーカーとか。
俺が好きな会社が今後も商品を出して欲しいと言う意味を込めて、損してもいいやという考えである。
後は、いちかちゃんが「この会社とか伸びそうじゃない?」と言った会社に20社ほど適当に分散投資した。
因みに今回の投資は、売ったり買ったりのトレードで稼ぐのではなく、配当金目当ての長期投資と言う奴で、証券は全てネットで購入した。
所謂ポートフォリオってやつを組んだのである。
前の人生だと米国株を買えと話題になっていたアレである。
前の人生の2009年段階でこれをやっていた人は殆どいなかったし、今回の人生もあんまりいない。
こう言うのって皆がやり始める前にする方が強いから、前の人生の記憶があるって言うのは思ったよりチートだなぁと思った。
まぁ、前の人生ではダンジョンとかなかったし伸びる会社も前の人生とは随分違ったものになるんだろうけど。
それと、前の人生と違うと言えばダンジョンの出現によって前の人生では見たことも聞いたこともないような人がテレビで大ブレイクしていた。
どこぞのジャニーズか俳優かは知らないけど、何でも戦闘に向いた職業の持ち主で芸能活動をしながらダンジョンの探索・攻略で活躍しているらしい。
……って、これ佐藤さんが俺にやれって言ってた奴じゃん。
まぁ、俺なんかよりこのイケメンがやった方が世間からのウケも良いだろう。知らんけど。
そんなこんなで、相変わらず二週間に一度のペースでダンジョンの攻略の依頼を受けたり。その依頼報酬を全部株につぎ込んだり。
それ以外はいつも通り、ダンジョンで戦闘訓練をしたり。いちかちゃんといちゃいちゃしたり。そんな感じで過ごして一年が経ち、中学生活も終わりを迎えようと言う頃には、俺といちかちゃんの純資産は五百億円にも膨れあがっていた。
その、何というか……いちかちゃんが「これとか伸びそうじゃない?」って言って投資した会社が悉く馬鹿みたいに伸びたのだ。
魔石の新エネルギーで成功したり、対魔物の武器で爆発的に伸びたり。
後は防災グッズの製造会社とか缶詰メーカーとか、いざダンジョンのモンスターが出てきたときのための避難用品の需要が上がったり、地下シェルターを立てる家庭が増えたためにその会社が爆発的に伸びたり。
そんな感じで、会社によっては株価が何十倍にも伸びた。
そのせいで、今や大金持ちである。だがしかしそんな大金の使い方は不明である。まぁでも、株式投資で資産が増えていくのは、筋トレでステータスが伸びていく楽しさに近しい何かを感じたので今後も続けようと思う。
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