格上との戦い

 馬鹿高いステータスを持つドラゴンを前に、俺はこのダンジョンに潜ってから上がった分のステータスを改めて確認した。


名前 佐島 靖 

体力 698兆9810億2056万/698兆9810億2056万

筋力 2兆5844億6865万6000(100)

魔力 401京9499兆0728億1000万(100)

敏捷 2兆5844億6865万6000(100)         ▲

Lv 375

職業 なし

スキル ▼

『鑑定 Lv75』『敏捷増強LvMAX』『敏捷増強Lv86』『体力増強LvMAX』『体力増強LvMAX』『体力増強Lv6』『筋力増強LvMAX』『筋力増強Lv86』『超回復LvMAX』『超再生LvMAX』『並列思考Lv42』『魔力増強LvMAX』『魔力増強LvMAX』『魔力増強LvMAX』『魔力増強Lv32』『農業Lv45』『教授Lv63』『柔軟LvMAX』『ダメージ軽減LvMAX』『ダメージ軽減Lv32』『魔力効率増強LvMAX』『魔力効率増強Lv82』『遊泳LvMAX』『魔力強化LvMAX』『魔力強化Lv52』『隠密LvMAX』『体力強化Lv98』『敏捷強化Lv84』『筋力強化Lv84』『経験値増加Lv70』『アイテムボックスLvMAX』『アイテムボックス拡張Lv12』『経験値増加Lv65』『料理Lv21』『裁縫Lv19』『言語理解Lv27』『気配探知Lv12』

特殊スキル

『精神完全耐性』『俊足』『剛力』『体力自動回復』『魔力操作』『魔力吸収』『魔力完全耐性』『魔力解放』『魔力威圧』『超演算』『物理完全耐性』『瞬歩』『縮地』『神速』『加速』『体力吸収』『体力貯蓄』『審美眼』『関節可動域増加』『金剛力』『筋硬化』『筋力威圧』『阿修羅』『スキル重複』『体力自動回復』『鮫肌』『雲隠れ』『スキル伝授』『軟体骨格』『アイテムストレージ』『真眼』『超遊泳』『光学迷彩』『筋力解放』『実像分身』『光速移動』『魔眼』

固有スキル

『反復試行』

称号

『蹂躙する者』『数値の暴力』『魔力のゴリ押し』『強者の余裕』


 ステータスの元数値は13711000で魔力の元数値34277500。レベルが375に上がった影響か、元のステータスが以前の500倍近く上がっている。

 その上で、増強系や強化系のステータスも上がっているのだ。その強化倍率は何千倍じゃ効かない。

 その上で称号が数値を底上げするのだ。とんでもないことになっている。


 特に魔力の401京は戦慄するし、体力も尋常じゃなく多い。


 しかし、俺の筋力も破格に高いはずなのに、目の前のドラゴンに比べれば5倍ほどの差が付いている。

 筋力五倍。もし、ドラゴンの攻撃をまともに受けたら俺はただじゃ済まない。


 こちらを睨み、威圧してくるドラゴンを俺は負けじと見据える。


 400京の魔力でプレスしてもやはり魔力完全耐性に加え7兆も魔力があるあのドラゴンを圧殺するには至らない――いや、魔力のゴリ押しで耐性は貫通できるはず。にも関わらず潰れなかった。こんなの初めてだ。

 観察していると、ドラゴンがもの凄いスピードで俺を爪で引っ掻いてきた。


 体力が一気に1億ほど削れる。やはりステータス5倍差。とんでもないダメージだ。俺は引っ掻かれ血が滲む腹を超再生で治しながら、この空間にダダ漏れになっていた魔力を自らの周りに圧縮した。

 筋トレの時に、一人でトレーニングしているときに。いつか、プレスで死なない敵が出てきたときに使ってみたいと思っていた技があった。


 自らの周りに集めた魔力を更に圧縮して、自分の身体に纏わせる。それは鎧のように。自らを護る防具となりつつ、魔力の硬さはダイヤモンドを遙かに上回る攻撃的な武器となる。


「『魔力纏鎧』……戦闘態勢に入るのは、初めてだ」




                    ◇



 お、重いっ!! なんだ、この魔力は!?


 靖が目の前に現れたとき、ドラゴンが最初に思ったことはそれだった。

 圧倒的な魔力量から放たれる、圧倒的な攻撃。ドラゴンはなんとか亜神としての矜持と持ち前のステータスで耐えるがいっぱいいっぱいだった。

 というかなんなんだ。魔力完全耐性が全然仕事をしてくれない!


「(ふんっ、いきなり全力の攻撃を放ってくるとは礼儀のなっていない小僧よ。しかし今ほどの攻撃をすれば小僧の魔力は最早空だ。ここで仕留められなかった以上、我の勝ち――んぐっ!?)」


 しかし、二発目の衝撃。


「(こ、こやつ。本当に人間か!? ……なんて馬鹿げた魔力量なんだ。しかし、この魔力量から察するに、こいつは魔力特化。筋力の高い前衛を付けずに一人でのこのこやってくるとは愚かな奴よ)」


 ドラゴンは次の大規模魔力攻撃()が放たれる前に、3兆もある敏捷を活かして、靖を爪で攻撃した。ガキィィン。

 斬り裂いたとき、まるで鋼に爪を立てたような感覚を覚える。


 ドラゴンは驚いて靖を見るが、靖の服を切り裂いたばかりで肌には何一つ傷が残っていなかった。いや、服の周りに見える微かな出血の跡。

 僅かに傷を付けたのだろうが、かすり傷。しかもそれを一瞬で治す辺り、回復魔法を扱えると見える。


 高すぎる耐久に回復魔法、強力な無属性の魔力攻撃。全てが厄介だ。


 しかし、どれもこれも魔力の消費が激しいはず。このまま持久戦に持ち込めば勝機があるとドラゴンは考えた。

 しかし、靖は言う。


「『魔力纏鎧』……戦闘態勢に入るのは、初めてだ」


「(馬鹿なっ……今ままで戦闘態勢にすら入っていなかったというのか。い、いやはったりだ。この我が。最高神様に認められ、亜神になったこの我が、人間如きに赤子のように扱われるなどあってはならぬのだ!!!)」


 刹那、靖の姿が消え失せ。代わりにドラゴンの頑強な鎧を紙切れのように貫通し、片腕が消し飛んだ。体力の2割が消し飛んだのを感じる。

 6000億ダメージ。自動回復スキルがあるとは言え、追いつかない。


「う~ん。回復されるか。一応押し切れそうだけど、折角だしもうちょっと試したい技もあるなぁ。よし……」


 もう、ドラゴンは戦意を失っていた。今のままでも最早勝ち目がない。

 にも関わらず、靖は更に強くなる手段があると言う。いや、あるのだろう。動きを見るからに敏捷は自分に匹敵するし、魔力は亜神である自分を遙かに超える。

 にも関わらず特殊スキルを使った形跡すら見当たらない。このままじゃ死ぬ。


 ドラゴンは誇り高い生き物である。しかし、それと同時に強者を認める生き物であった。


 と言うか、このまま何も出来ないで軽く殺されるのは嫌だった。


「ま、参った!! 我の負けだ!! 奴隷にでも従魔にでもなんでもなる。だ、だから命だけは助けてくれ!!!」


 亜神にまで至ったドラゴンは、靖が本気を出す前に命乞いをした。




                   ◇




 ドラゴンに命乞いをされた。


 こいつ喋れたんだ、とか。折角だからもっと色々と試してみたかったなぁ、とか思うところはいくつもある。

 別に、このドラゴンに従って欲しいなんて1ミリも思ってないけど、言葉を喋れる相手に命乞いをされながらも容赦なく殺せるほど、俺は冷徹じゃなかった。


「……わ、解った。殺さないよ」


「ほ、本当か!? あ、主殿。恩に着る!! この恩は我の一生をかけて返す所存だ!!!」


 ……そ、そうなんだ。別に、そこまで思って貰わなくても良いけど。


 そう思っていたら、聞き覚えのある機械音声が脳内で響く。


《亜神竜の服従が確認されました。佐島靖の【神の試練】の踏破が確認されました。職業『従魔師』が解放されました。

 また、ダンジョンマスターが従魔になったため、管理者権限は主である佐島靖に委譲されます》


 職業? ダンジョンのボスやゴブリンでも就いていて。でも、この世界の人間はどの職業に就いていても『なし』だったそれが解放されたのか!?

 それに、ダンジョン。このダンジョンを俺が好きに設定できるようになるってことか!?


《佐島靖がこの世界で初めて『職業』を就得しました。これにより、全ての地球人にも職業が解禁されます。また、神の試練達成により条件が解放されました。

 世界の改変が始まります。全地球人にクエスト【神々の試練】が発注されました》


 俺は知らなかった。職業を就得した下りからあとのアナウンスが、全世界の人にも聞こえていたと言うことを。


 俺はただ自分で設定できるようになったダンジョンと、新たな職業について確認するためにうきうきで鑑定を発動するだけだった。

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