授業

第10話

昼休憩が終わりマティはロッカールームで実戦着に着替え、中庭にある広大な森に向かう。


 午後の授業は校内の森を使った実戦授業で、教員が森の中に予め書いた魔法陣から特性の違うゴーレムを生成して森に放つ。それをチームに分かれて討伐するのだ。教師が空中に大きな紙を広げて指をさしながら簡単な説明を行う


「そろったか? チーム分けはこちらで済ませてある。ゴーレムの核に使っているクリスタルをチームで3つ集めて授業終了までに戻ってくればクリア! 行け!」


 声高々に号令をかけ、魔術を発動して森の中に配置されたいくつかの魔法陣からゴーレムを出現させるが、生徒たちはまだ空中に浮かぶグループ分けの紙を確認中で、ほとんど教師の話を聞いていない。


「マティと同じチームだ! よろしくね」


「俺もだ……よろしく」


 図書室でのことは全く気にしてない様子のグロムとクラスでは影の薄いダガー使いで水属性の魔術を使うウォルターがマティのチームメイトのようだ。二人とも物理攻撃はそれほど強くないが、協力し合うことで攻撃力は十分問題ないチームだ。


「よろしくね。そうだ、支給物資はあるのかな? 先生、支給物資はありますか? 自身のアイテムは持って行ってもいいですか?」


 やっとそれぞれのチームで分かれて作戦を立て始め騒がしいなか、マティが教師に手を上げてよく通る声で質問すると、もうすでに役目を終えたように椅子に座っている教師が思い出したようにポンと手を叩く。


「そうだ、そうだ。迷子になったり、戦闘不能で救援を要する場合はこの発光球を打ちあげれば救助に行く。なお、授業終了になると勝手に発光球が打ちあがり追試と魔法陣の撤去作業の手伝い! それと、所持していいのは自身の武器のみ。回復薬などの使用は禁止」


「結構、重要なこと言い忘れてるよ……発光球を貰って簡単に作戦立てようか」


 発光球を一人づつ取り、腰に付けた携帯ポーチにしまうとマティは地面に簡単な森の形を書いて作戦会議を始めた。


「私たちのチームは魔術でいくと火、雷、水の属性。それを踏まえた戦力で考えると風属性の奴との戦闘は回避しよう。先生の属性と技量、立地条件から魔法陣は4、5個あるとして生徒が行ける距離から推測すると森の中心から手前のエリア内で東、西、南で魔法陣は設置されてると思う。特に南東は先生の土属性と土地条件が良いはずだからこの辺りは攻撃力が強いゴーレムや回避したい風属性のゴーレムが多いかも」


「俺もマティの予想で大方いいと思うが、先生の性格を考えると南東は一体のゴーレムの戦闘力は低くいが数で押してくるんじゃないか? 西南にある湖付近は土地的に魔術との相性が悪くて弱いゴーレムが出ると思われがちだが、あの人、ああ見えて負けず嫌いなところがあるから油断ならないと思う」


「え~それならどうするの? 私たちの属性相性が悪いだけなら弱いゴーレムがいる南東に行くのが良くない?」


 ウォルターとグロムの意見を聞きながらマティは地面に書いた森に書き足した情報を吟味する。ウォルターの言う教師の性格を考え、周りのチーム編成を観察すると水属性の攻撃力が比較的強くなるようになっているのに気付く。


「たぶん湖付近の南東のゴーレムよりは少し強いと思う。でも、その分ここからの距離はそんなに遠くないし授業時間までに戦って帰ってくるのを考えたら、移動で体力と時間を奪われるよりは近場で少し強いゴーレムを狩るのがベストじゃないかな」

 

マティの作戦にウォルターは納得したように頷き、グロムは2人が良いならと了承した。作戦が決まったところで出発するころには他のチームもボチボチ出発し始めていた。

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