第11話

マティ達は森の向かい湖沿いに南に行くルートを進む。しばらく進むとゴーレムよりも先に魔法陣を見つける。


「こんな横着なとこに魔法陣設置するとか、期待を裏切らない先生だよね」


 そんな、軽口を言い合いながら和やかな雰囲気で周囲を警戒し始めてすぐに水属性をもつゴーレムを見つけて3人は息を呑む。


「マティ……水属性ゴーレムはちょっと強いだけって言ったよね」


 グロムが震える声でマティに文句を吐く。それも目の前のゴーレムを見れば言いたくなるのは分かった。今は生徒を待ち伏せするのに身を隠しているつもりなのか座り込んでいるゴーレムの大きさは立ち上がれば優に5メートルは超えていそうだ。何よりその胸元にはクリスタルが3個並んでいる。


「あの面倒くさがり教師! 1体のゴーレムに3個のクリスタル仕込むとか何考えてんのよ……」


「でも、説明では3個のクリスタル回収とだけで3体のゴーレムを倒してとは言ってない」


 木陰で身を隠しながら苛立つマティにウォルターが冷静に突っ込む。早くクリアしたいマティは予想外の出来事に苛立つ自分を律して、冷静に分析をする。


「幸いにしてまだ、ゴーレムはこちらの存在に気付いてない。まずは罠を張ろう。ウォルターのダガーを地面に設置して魔術で水の壁を作れるようにする。そして、私がゴーレムを誘い込んでウォルターの水壁で閉じ込めたとこにグロムの雷を打ち込めば、かなりゴーレムの体力を削れると思う」


「えぇぇ!!? 戦うの? 別の弱そうなゴーレム見つけようよ!」


 グロムは涙目でマティの腕を掴んで首を横にブンブンと振っている。ウォルターはそんなグロムを落ち着かせるように大丈夫だと肩を叩く。


「心配しなくても死ぬことはない。それにこのゴーレムを逃したらこの辺りで他のゴーレムを見つけること自体、難しいと思う。東に今から向かってもタイムオーバーになるだろうし、追試と片付けは遠慮したい」


「やだやだ! 死ななくても、それに近いことはあるでしょ!? 無理だよ」


「グロムは距離を取って剣に魔力を込めて、身動き取れないゴーレムに撃ち込むだけだから。それでゴーレムが倒れなくても麻痺すると思う。心配しないでも私が盾になるからグロムはすぐに2撃目の準備して」


 なんとかグロムを宥めすかして罠の準備をして配置に着く。この作戦で一番危ないのはたぶんゴーレムを誘導し、2撃目までの盾役をするマティだろう。今は授業に集中したいところだが、マティの頭の片隅には早く終わらせてリックを捕まえたい思いが強く、グロムの異常なまでの緊張に頭が回っていなかった。


 作戦開始の合図と同時にマティがゴーレムの前に姿を現すと、ゆっくりとゴーレムが立ち上がる。上に茂る木々の枝が折れ、思っていたより大きいが動きは遅く、マティのスピードなら誘導もたやすい。


「ウォルター!」


 罠を張った場所にゴーレムを誘導し、マティが声を掛けると一気に巨大なゴーレムを囲う水壁がそびえ立つ。続けてマティはグロムに声を掛け水壁めがけて雷の魔力を込めた剣を振るうと水壁を雷が駆け巡り周囲に強い光と爆発を轟かせた。周囲には水蒸気と放電した電気がまだバチバチと漂っている。

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