第67話

「で、どうなったんですかローランドは? 治してあげたんでしょう?」


「まぁ、苦しそうだったが、あいつの治してほしかった要望は取り敢えずは叶ったんじゃないか?」


 曖昧な答えに、マティは納得せずに眉間に皺を寄せて首を傾げるが、直接的にマティに伝えるのも問題があるだろうとカリオの配慮だ。


「あいつは部屋からも出られないし、誰もあの部屋に訪ねてくる人もいないだろうから暫くは、痛みに苦しんだまま……他の誰かに助けを求めて別の薬を飲んだらまた、見ものだけどね……」


「リック、悪魔みたいな顔してるよ……まぁ、とにかく全部片付いたってことで良いのかな?」


 黒い笑みを浮かべるリックの頭を撫でて話すマティにカリオが溜息を吐いて答える。


「義理も果たせたし、俺の依頼は完了。今回は思わぬ形で大事になったが、いい人脈も出来た。マティもお疲れ。で、リックはどうするんだ? 国からも誘いがあったんじゃないのか?」

 

 マティとマロンが避けていた話題をカリオが意地悪くリックに訪ねると、少しの沈黙のあとリックはマティの前に移動して意を決したように顔を上げる。


「僕は……アラステア王立学術院に残る。マロンと一緒にここで勉強する……あと、マティとも一緒に居たいから!」


 赤い顔をしてマティの手をギュッと握りしめると、マティはニコニコ笑って軽い調子で「嬉しい」とリックの手を握り返す。リックは複雑な表情を浮かべて困ったように笑顔を返しているのをカリオが声を出して笑う。


「そんなんじゃ、マティは鈍いから伝わらないぞ。まぁ、でもマティを口説くのは100年早い!」


「えぇぇ!? 私いまリックに口説かれてたの? そっか……可愛くて嬉しい!」


 不器用で人嫌いのくせに甘えん坊で憎たらしいリックをマティはとても気に入って弟のように感じていた。まさかリックから恋愛感情の好意を向けれているとは夢にも思っていない。


「別に、僕にはカリオと違ってまだ時間があるし、徐々に分からせるから問題ない!」


「無駄な努力だと思うけどな、マティの理想の男は俺だから」


 本気なのか冗談なのか分からないカリオの言葉に、マティの顔が真っ赤になり固まってしまう。リックはムスッとしてカリオに食って掛かる。


「自惚れるなよ! 今は可愛いけど、これから恰好良く成長していく僕の方がただの筋肉男より魅力的だ!!」


 リックの反応を面白がっているカリオは立ち上がって赤い顔をして固まるマティの手をリックから奪い取り見つめる。

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