第66話
「お前は、ジュディのことを本当に愛しているの? 身請けをするつもりはあるの?」
リックの問いにローランドがゲラゲラと腹を抱えて笑い、馬鹿みたいに話しはじめる。
「なんだお前、バーレスクってあの娼館の奴か!? あの娼婦、ジュディは確かにテクニックは良いが使い古しの娼婦を身請けなんて高い金を払って俺がするわけないじゃないか! 娼婦のくせに愛だなんだって信じるているなんて馬鹿な女だ」
「分かった……薬だ」
二つ持っていた小瓶の一つをローランドのベッドに投げ渡すと、なんの疑いもなく嬉々としてリックから渡された小瓶の蓋を開けて中身を飲み干す。
「ねぇ、カリオ。こいつは今、停学扱いで部屋から出られないんだよね?」
「デイビス家の処分がきちんと済むまでは学術院でもローランドは寮の部屋に抑留とい話になっている」
その言葉を聞くとリックはわざとらしく声を上げて慌てるそぶりを見せ、もう一つの小瓶を見せる。
「あー渡す薬、間違えちゃった! それ、勃起が治まらなくなる薬だった」
「なんだと?! ふざけるな糞ガキ! そっちの薬をよこせ!」
リックの下手な演技にも気を留めず、もう一つの小瓶をリックの手から奪い取り飲み干してしまった。
「本当に馬鹿な奴。今飲んだのは性欲制御の強い効果があるから、勃起するとそれを抑えようと滅茶苦茶痛くなるんだよね。耐えられるといいね」
ローランドの顔から血の気が引いて、さっそく効きはじめた薬に股を押さえて叫びだす。
「い゛~ぃぃ痛い! 痛い!! もげるぅ……助け……助けてくれぇぇ!!!」
「精々のたうち回って苦しめ!」
吐き捨てる様に言うとリックは悔しそうに唇をかみ、苦しんでいるローランドを見ていた。カリオは驚きこそしていたが、ローランドに同情の念は少しも感じずに微笑んでリックの肩に手を置いた。
「リックが気にしている娼婦の子は、両親が見つかって借金返済後は家族と暮らせるそうだよ。それにバーレスク夫妻は娼館を出た後の娼婦達も暮らしは大丈夫か定期的に会ったりして様子を見にまわっているらしいぞ」
「そうなんだ……もしもジュディが牢屋に入れられるようなことになってたら僕はこいつを毒殺していたよ」
リックはニヤリと笑うとカリオを置いて先に寝室を後にした。残されたカリオは深い溜息を吐き、痛みに叫ぶローランドに語りかける。
「命拾いしたな……その痛みがいつまで続くのか知らないが不能も治っただろう? これで義理は果たしたからな。精々頑張れよ」
痛みに悲鳴を上げているローランドにはカリオの言葉も耳に入っていないようだったが、これ以上、掛ける言葉もないカリオもそっと寝室を後にした。
「凄い悲鳴が聞こえてますけど大丈夫なんですか? リックは聞いても何も言わないし!」
状況が分からずマティとマロンがカリオに文句を言って詰め寄ってくるが、一先ずローランドの部屋から出ようと背中を押して外に出て場所を変えて話そうとリックの部屋に戻ることにした。
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