第65話

4人でローランドの部屋の前に移動するとカリオが部屋のドアをノックして声を掛けた後に、様子を見る為にあずかっているという鍵を使って中に入る。部屋の奥にあるもう一つドアが寝室で、カリオ一人で様子を見てくると言ってノックをして入っていく。


「ローランド、薬を持ってきた」


「ほ、本当か?! 早くよこせ!」


 金色でゴテゴテとした趣味の悪い居間で待つ三人の耳にもローランドの興奮したような声が漏れ聞こえ、顔を歪める。カリオがローランドを取り敢えず諫めて寝室から戻る。


「マティはマロンとここで待っていてくれ。興奮しているし、リックだけのほうがいい」


 少し不安そうにリックがマティとマロンの顔を見るが、カリオが判断したように精神が不安定なら知らない人が何人も顔を見せるのは興奮を助長させる。


「心配しないでも俺が一緒に居るから危険はないよ」


 リックは頷いてカリオと一緒にローランドのいる寝室に入っていた。寝室に足を踏み入れると、予想よりも健康そうなローランドが上半身を起こしてベッドに座っている。


「薬を作ってくれたリック・バーレスクだ」


「誰でもいい! 早く薬をよこせよ!」


 苛々と爪を噛みリックを睨みつけるローランドの顔にはサディスの面影がある。緊張こそしているリックだが、怖がることもなく苛立っているローランドに質問する。


「症状は苛立ち以外になにがある?」


「はぁ?! なんだこのガキ! カリオ、どうでもいいから薬だ! 薬!」


「落ち着けよローランド。症状を伝えないと薬が効くものか判断できないだろう?」


カリオはもう呆れかえっているせいか、感情もなく煩いものを黙らせるように声を掛けると、ローランドは爪を噛みながら面倒臭そうに答えた。


「勃たない……熱が引いてから全く男として機能しない!」


「熱の前……ミリーを抱いた時はどうだった?」


「ミリー? あぁ、処女だった娼婦のことか……いつもより調子が良かった。初めてを忘れられないように激しく抱いてやった!」


 気遣うこともなくミリーのことも忘れてゲスイことを笑いながら答えるローランドに、リックだけでなくカリオも顔を歪めた。無言で拳を作っていたリックは怒りを抑えながらもう一つローランドに問う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る