第68話

「卒業後は俺の元に来るんだよな? ついでに、調剤の技術と面白い能力を持ってるチビ共も人脈が広がりそうだし面倒見てやるよ」


 大人の魅力だと言わんばかりにマティに迫り、リックに見せつけるカリオにマティがオーバーヒートしてしまう。


「またそうやって人を誑かして!! カリオ先輩もう時間ですよ。マロン!移動!」


「はいは~い!」


 ほったらかしにされていたマロンは出番だとマティに言われた通り空間を歪め、移動できる道を作り出した。


「遅刻しちゃいますよ! 早くはやく行ってください!!」


 からかわれているのが分かっても、恥ずかしさにマティはカリオから手を引き抜き歪んだ空間にカリオをグイグイと押す。


「まだ、時間じゃ……まて、マティ!」


「もう、早く行ってください!!」


 マロンがどこに繋げたか分からないのにとても足を踏み入れる気にはなれず必死にマティを止めるが、リックとマロンがとどめとばかりにカリオの足元に体当たりする。


「早く消えろ!!」


「僕のお髭を凍らせる筋肉デブは退散!!」


「わっ、わぁぁぁ」


 体勢を崩しそのまま歪んだ空間にカリオが吸い込まれるように姿が消え、悲鳴の後にドボンと水に落ちた音が聞こえマティが慌てて手を伸ばそうとするとマロンが空間を閉じてしまう。


「頭冷やすといいの! 噴水にドボ~ンなの」


 マロンが尻尾を振りながらクスクス笑うのをリックが「ナイス!」声を上げて二人で楽しそうに笑う。


「あぁ、カリオ先輩ごめんなさい!!」


 両手でまだ赤い顔を挟んで謝りながらブツブツとまだ何かを言っているマティの上着の裾をリックが引っ張りマティを見上げる。


「僕、あと何年かしたらもっと背も伸びて可愛いから格好いい男になると思うんだ。それに、頭も良くてカリオなんかに負けない男になるから傍らで見てて!」


 真剣に話してくれているのは分かるが、やっぱりまだ幼く可愛いが勝るリックに微笑んでしまう。


「物凄い自惚れね……でも、楽しみ! これから、リックもマロンもよろしくね」


 三人の手を重ねて頷きあうと、何処から現れたのか重ねた手の上に隠密カメレオンが姿を現す。マティが隠密カメレオンの尻尾から手紙を抜き取り中身を確認する。


「次の依頼が決まったぞ……うそ、カリオ先輩?!」


「依頼ってまた? 何なのあいつ……」


「また、ドボ~ンする?」


リックとマロンという駒が増えたことでまた、人脈を広げるべく依頼を受けたのだろう。抜け目のない男だと三人はそろって溜息を吐いて顔を見合わせて笑い合い、次の依頼は何かと手紙を覗き込んだ。


――次はどんな絆が結ばれるのかはまだ誰にもわかない。




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