仕返し

第62話

移動した先は南棟の食堂で朝食を取る生徒で賑わっている。


「ねえ、今から僕に殴りかかってる奴が来るから捕まえて」


 カリオに声を掛けるとリックは食堂に入っていき、辺りを見回して殴り掛かってくるという相手を見つけてニヤリ笑い声を掛ける。


「おい、ドラゴンの成り損ない! 頭なんか使わないのに栄養補給か?」


「リック・バーレスク!? お前、俺に喧嘩売ってんのか?」


「そうだよ。頭空っぽのトカゲ野郎!」


 以前、リックを目の敵にしていたゲドの姿にマティがアッと声を上げると同時にゲドが殴り掛かる勢いでこちらに走って来る。先に指示されていたカリオがリックに突進するゲドを持ち上げて止めた。


「放せ! なんだよお前!?」


「暴れるな……リックどうするんだ?」


暴れうゲドをカリオは難なく持ち上げたままリックに更なる指示を仰いでいるとゲドが体をひねり尻尾を振り上げたリックを殴りつけようとしているのを、マティが寸前のところで尻尾を掴んで止める。


「もう! こないだも、これで殴ったら洒落にならないって言ったでしょう?」


「何だよ、デカ女も一緒なのかよ! 放せ、ぶん殴ってやる!」


 リックはカリオとマティが、がっちりと押さえつけているゲドを冷たく睨み尻尾を観察しはじめた。


「竜の鱗の代わりにトカゲの鱗でも……このぐらいの大きさで良いかな」


「何するつもりだ! やめろ、触るな!!」


 ゲドが何かを察して青い顔をで、めいいっぱい抵抗してみるが、二人が押さえつける手が解けるはずもなく、マティとカリオもなんとなくリックがやろうとしているが分かって暴れるゲドに「悪いな……」と小さく呟く。リックは悪い笑みを浮かべてゲドの尻尾から勢いよく鱗を引き剥がした。


「あ゛ぁぁ!! いっ、痛いぃぃ!!!」


「煩いな。いつも偉そうにしてるくせに、鱗一枚剥がされたくらいで喚くなよ」


「ふざけんな! 男娼のくせにアンアン鳴いても許してやらないからな!!」


 拘束され半泣き状態で、よくもまあリックを挑発するような言葉を吐けるものだと、マティとカリオは苦笑いを浮かべる。ただ、リックはこの状況を楽しむようにゲドの挑発に乗り、もう一度尻尾を撫でる。


「この状況で本当に馬鹿だね……でも、僕は優しいから君がアンアン鳴いて許しを請えば満足するよっと」


「ぎゃぁぁぁ!!」


 容赦なく尻尾からもう一枚鱗を剥がしマティとカリオはその様子にドン引いていた。流石にゲドが可哀想になりマティが止めに入る。


「リック、やりすぎ……鱗も手に入ったし、もういいんじゃない?」」


「まだ、アンアン鳴いて許してって聞いてない」


 目が座りこれはゲドから言葉を聞くまで止めないという気迫を感じマティは困惑してカリオに視線を投げて助けを求めるが肩を竦めるだけだ。

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