情報

第4話

クロノスの扉を使い北棟の講義も十分に出来る広さが備わった図書館に移動する。体力資本の騎士道学部だが魔術合成については座学で学ぶことが多い。そうは言っても高学年になってくると魔術合成科は自習のようなもので、座学はレポート提出とテストさえ真面目にやっていればそれほど問題ない。図書館内には、すでに数人のクラスメイトで埋まっていたので、そこから少し離れた席に座るとさっそくメモの確認を始めようとしたところに声を掛けられた。


「ねえマティこれなんだけど、どっちがいいと思う?」


 同じクラスのグロムが綿あめの様なふわふわの巻き毛を揺らしながらマティに手にしていたノートを見せて質問をする。マティは慌ててメモをポケットにしまい、グロムが広げているノートを覗き込む。


「えっと、素材について……ゴムとガラス」


「そう! 武器に魔力込めると自分に戻って来て失神するからどうにかしたいの」


 人当たりも良く、成績も良いマティにはよくこうしてクラスメイトから相談を受けることも少なくない。グロムは雷系の魔術を扱うが、熱のコントロールは上手くいっているものの魔力を強く武器に込めるほどに電流が大きくなり、コントロールを失って連兵場で失神して倒れる姿はよく見られるものの一つだ。マティもグロムの苦労は良く分かるので早くメモを確認したい気持ちを抑えて真剣に考えているとグロムがニヤケながらマティを肘で小突く。


「さっきカリオ先輩と一緒だったでしょ? 本当に付き合ってないの?」


「ないよ」


 この手の話しは無駄に目立ち、ちょっと顔の作りが良いカリオのせいでやっかみ半分で噂されているのを知っている。なので、余計なことは一切言わずに冷たく突き放すように答えるのが効果的なのを学びたくもないのに学んだことの一つだ。


「でもさカリオ先輩って誰にでも優しいけど、マティは特に可愛がってもらってない?」


「ないよ」


「えぇ~でも、みんなの噂だよ~」


 おそらくグロムが武器の相談よりもカリオとのことを聞いて噂の種にしたいが為に来たのだと悟り、溜息を吐いてからマティはしつこい相手に言うお決まりの返答をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る