脅迫
第17話
マティはリックだけでなく、あのケット・シーについても入念な情報収集を就寝近くまで奔走していた。翌朝、だいたい使い魔達や使い魔を持っていない生徒の為に校内専門配達人が手紙を受け取り人のもとに届けに向かう時間帯に蒼玉館のリックの部屋に赴く。
無言でノックをして部屋のドアが開くのを待っていると、休日と言うこともあり、まだ寝ていたのか目を擦りながら眠そうなリックがドアを開ける。
「おはよう!」
マティの姿にリック驚いてすぐさまドアを閉めようとするが、そんな行動を予測していたマティはドアを抑える。
「昨日はどうも! 私、マティ・コッカ-。騎士道学部、魔術合成科の7学年。これで知らない人ではないでしょう?」
リックはまだ必死にドアを閉めようと頑張っていたが、力の差は歴然でマティは挨拶を終えるとズカズカとリックの部屋に上がり込んだ。
「勝手に入るな!」
「ドアが開いたままだったから招いてくれてるのかと思って。それに、外で話すより中のほうが良いと思うけどな。ほら、手紙もあるし」
ポケットに入れていたリック宛の手紙を見せると、ひったくるようにマティの手から奪って封を切って読みだす。
「それ、ご家族からでしょう? そんなに楽しみにしてたんだ……でも、近いから会いに行けない距離でもないよね」
「楽しみにしてない。お前に関係ない」
確かに楽しみに待っていた手紙を読むには険しすぎる表情をしている。ものすごく重要であったり緊急を要する手紙ならば、それ相応の配送が行われるのでカリオが手に入れられた時点でその二つは当てはまらないはずなのだが、リックは手紙を読み終えるなり流しで手紙を燃やした。
「忙しいので帰ってください」
「まだ話してないじゃない」
「いま話しました。もう満足でしょう? 出て行ってください」
少しだけリックの素の部分が垣間見れた気がしたが、もうすっかり人を寄せ付けないように覆い隠してしまっている。けれど、まだ寝間着姿で寝癖をつけたリックが虚勢を張っても可愛いだけだ。
「単刀直入に聞くわ。ご実家の娼館で使う薬を作っている?」
「それをどこで……勝手に手紙を読んだの?!」
「まって待って! 手紙は読んでない」
否定とも肯定ともとれるリックの答えにマティは困惑していたが、数日前から毎日のように届く家族からの手紙が一通から二通に増えた。その手紙に書かれていた薬についての内容を、まさかマティが話してくるとは思っていなかったリックは冷静を装いつつも心底驚いていた。
「話を聞く。マティ・コッカ-さんは僕に何の用事があるの?」
探るような目つきでやっとマティのことを真っすぐ見て話すリックに、年齢も体格もマティの方がずっと上であるにも関わらず、妙な威圧感を感じる。
(自分からは情報を出さないあたりこの子、やっぱり賢いな)
冷静で頭の切り替えが早く、自分より年下だと気を許せば危険だとマティの直感が警報を鳴らしている。
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