第44話

(大量じゃなければ盗めるわね)


「それじゃ、出来上がった媚薬はいつ渡しましたか? 残っている媚薬は見ましたか?」


「分けたりするから、作った翌日に全員に渡したよ。残ってる媚薬は別に確認しなくても、みんな一ヵ月前後で無くなるのは分かってるから無くなったら空瓶を渡してもらってるんだよ」


「ジュディさんからも空瓶回収しましたか?」


「そう言えば、無くなるって言ってたわりにまだジュディからだけ空瓶貰ってないな」


 意外にも管理が緩いことに多少驚きながらも、ジュディに対する疑いが色濃くなってくるが、借金の返済がもう終わるなら今ジュディがただの嫉妬で毒を入れてなんの得があるんだろうか。ましてや身請け話まである相手にそんなことをするだろうか。


(私なら自由の身になってから毒を盛るだろうな)


「マティちゃん? もしかして媚薬になにか混ぜたのってジュディなの?」


「まだ、分かりません」


「そう……ここにで働いている子達は苦労してるし、みんな良い子なんだ。だから、毒なんて入れる子はいないよ」


 リックと同じように否定をするが、マティには同意することは出来なかった。苦労のそばには憎しみも潜み、殺意が簡単に湧いて実行に移されることを知っているからだ。いくら、待遇が良いといっても自由と比べてしまえば小さなことなのかもしれない。


「ちなみになんですけど、デイビス兄弟はまだここに来るんですよね? 今までに変な薬を持ち込んで楽しんでいたりってことは無いですか?」


「それはない! リックのことがあるから料金とか多少の我儘は許していたけど、働く子達の健康にかかわるし、持ち込みの道具とか薬は一切使わせてないよ」


「持ち込まれちゃったら分からなくないですか?」


「入口に探知機が設置されてて持ち物検査もして部屋に通す前に分かるよ。お客さんが変なものを持ち込むのは無理だね」


「それじゃ、働いてる女性達が持ち込むのはどうですか?」


 ステムはマティの質問に心底驚いたように目を丸くしてから笑って首を横に振った。そんな可能性は無いというが、居場所が分かる腕輪を付けての数時間程度の外出なら許されている娼婦達が正面の探知機がある入り口を通過することはないという。


(まぁ、自分や客を傷付ける物を使えばすぐに犯人は分かってしまうし、持ち込めるだけで今回の件は外から持ち込んだっていうのは除外してもいいのかな)


 取り敢えず聞くことは聞いたので、我を忘れてすっ飛んで行ったリックのもとへ行かねばとステムに御礼を言って部屋をでると、ジュディの部屋に向かった。

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