第35話
「一滴で変化が分かるね」
「え~さっきよりお花も小さいし、踊んないのつまんない! もっともっと!」
「枯れちゃったら可哀想でしょう? 変化が分かれば良いだけだから良いの! 撮影したらマロンは水換えて来て」
少し強めな口調で言われマロンの耳と尻尾がすねたように落ちて撮影の終わったマンドラゴラを持って水換えに向かった。リックはその様子に溜息を吐きながらメモを書き先ほどと変わらず自分のレシピ以外のものが含まれていないのを確認する。娼館で使われている媚薬のすべてを調べ終え、特に問題は見られず最後に残ったミリーがマティにこっそりと渡した最後の小瓶に手を伸ばす。
「それで最後? ずっと同じような形で退屈」
「毒が入ってるとすれば最後のこれってことだけど……一応、僕も耳栓しておこうかな」
予想ではこの最後の媚薬を垂らしたらマンドラゴラは枯れてしまうだろう。だが、媚薬には毒が入っていない可能性もあるので確かめるほかない。リックは最後の媚薬をスポイトで取るとマロンが耳を塞いでいるか確認してから一滴マンドラゴラの入った水に垂らす。他の媚薬と同じ反応しか見られず、スポイトを置いて耳栓を外そうとするとマンドラゴラの根が激しく動きだし、ガラス瓶が割れる。
『ぎゃぁぎょぎゃっぎゃぁぁ!!』
耳栓をしていても耳をつんざくような悲鳴を上げて、マンドラゴラは生気を失って枯れてしまった。やっと治まった悲鳴に耳栓を外すと、興奮したマロンの声が聞こえる。
「すっ、すっごかったニャ!」
「うん……耳栓しといて良かった。でも、これじゃなんの毒かまでは分からない」
一応、記録としてカメラで撮影をするが枯れて萎んでしまっているマンドラゴラからは反応した物の形跡は何も分からない状態だ。少なくとも断末魔の悲鳴を上げる前まではリックが媚薬に使っている薬草の反応が現れていたのは分かっている。
「最後のあの反応ってなんだろうな……ミリーが使った媚薬には毒が入ってたのはたしかなようだね」
「リックが作ったお薬、失敗作だったの?」
「これは娼館で使ってるものじゃなくて、客が持ち込んだ物らしいんだ」
「それじゃ、リックは悪くないし、解決だ!」
「まだ、毒がなんなのか分かってない……解決するにはマティの情報もないと駄目だ」
「えぇ~またあのうんこ女と会うの? 嫌だな~」
むくれるマロンにリックは困ったように笑って枯れたマンドラゴラを丁寧に紙に包んだ。
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