第39話
色々とカリオが受けた依頼をマティに片付けさせていたが、どれもこれも身の危険が伴うようなものは一切頼んだことはない。今回の件もリックに解毒剤を作ってもらって終わりのはずだった。
(完璧に俺の調査不足とマティの行動力を甘く見ていたミスだな)
カリオは深い溜息を吐いて組んでいた腕をほどき、絶対に引かない決意の視線を向けるマティを見つめる。
「媚薬の毒についもまだ結果が出てないだろう? その結果によっても変わってくるし、俺も、もう少しサディスのことを調べてみるから一日か二日待ってくれ。噂話が本当ならそれなりに準備をしないとデイビスだけでは済まない話になってくるからな」
生唾をゴクリと呑み込みマティは力強く頷く。妙な薬の売買が本当なら売り手と買い手がいて最低でも二人以上がいるのは間違いないし、下手をすれば大きな組織に繋がっているかもしれないのだ。自分の身は自分で守れると偉そうに言ったが不安が無いわけではないマティの心中を分かっているカリオは固くなっていた表情を緩めて笑う。
「マティが勝手に突っ走らない限り、心配ない。俺がちゃんと守るから安心しろ」
「なっ、なに言ってるんですか!? 私は大丈夫ですからリックのことを守ってあげてください!」
なんのてらいもなく、カリオが乙女心をくすぐるようなことを言うので顔を真っ赤にしてマティが言い返すと大きな手が頭を撫でる。
「そうかそうか、マティは年下が好みだったか」
「なっ、何を言って……違いますよ! 私はっ!!」
勢いに任せて気持ちを言いそうになり慌てて口を押えてカリオを睨みつけ、波立った気持ちを落ち着かせソファーから立ち上がる。
「あの、その、早めに調査よろしくお願いします! 失礼します!」
「情報が入りしだい直ぐに連絡する。また、転ぶなよ」
笑うカリオの顔を見ることもなくお辞儀をして逃げる様に部屋から出てドアを閉めると、息を吐き項垂れる。
(ずるい! あんなの好きじゃなくたって恥ずかしいし、勘違いする)
使える奴か使えない奴か、カリオにとっては好き嫌いの判断はそのぐらいだと何度も自分に言い聞かせてもフトした瞬間に冷やしていた恋心が燃え上がる。
「消えろ~消えろ~。部屋に戻ってリックに連絡しなくっちゃ!」
両手で自分の頬を軽く挟むように叩くと自室に急いで戻って行った。部屋の中では扉の前からマティの気配が無くなったのを感じてホッと息を吐き、ポケットから手帳を取りだす。カリオだけが解読できる文字と記号で書かれたページから目当ての一人を見つける。
「アラステア出身で親類が近衛兵だったよな……こっちからも情報を入れるか」
上着の内ポケットから携帯電話を取り出してさっそく連絡をして、情報を貰えるように根回しをはじめた。まさか、こんな大事になるとは思っていなかったカリオは連絡をしながら自分の机に積まれている課題を見て苦笑いをこぼした。
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