マロンの目
第40話
早朝から蒼玉館の廊下を猛スピードで走り抜け、リック・バーレスクの部屋のドアをドンドンと乱暴に叩く。
「おはようリック! 私、マティよ!」
返事がないので更にドアを叩こうと手を振り上げた瞬間に、ドアがそっと開き下からジトリと無言で睨みつけているリックの姿が見えた。
「おはよう! そっちの結果はどう? 昨日の手紙届いた?」
「ねぇ、煩いんだけど。早く中に入って」
リックの部屋に入ると、ソファーには虫かごを抱いてケット・シーのマロンが眠っている。マティは一瞬、警戒の色を見せたが、マロンが抱えている虫かごの中身を見るや否や飛びついた。
「帰ってこないと思ったら、このバカ猫に捕まってたのね?!」
「なんニャ……あっ!」
虫かごから隠密カメレオンを救出しているマティと目が合ったマロンはソファーから飛び起きて毛を逆立てる。
「それは、僕が捕まえたんだぞ!」
「私の隠密カメレオンよ! 手紙を運んできたんだから人のだって分かるでしょう?」
空の虫かごをマロンに投げ返すと救出された隠密カメレオンはマティの髪の中に素早く身を隠す。マロンは尻尾を揺らしながらマティの頭を見つめていたが、リックの制止の声で幕を下ろした。
「手紙は読んだよ。そっちもまだ調査中なんでしょう? 僕の方もまだはっきりしてないんだ……」
「毒はでなかったの?」
「ミリーから渡されたあの小瓶からは僕のレシピ以外の何かが入っているけど、それが何なのか分からない」
机の上にはマンドラゴラの写真と何冊もの図鑑が開かれ、書きなぐったメモがそこら中に散乱している。マティはマンドラゴラの写真を手に取り不思議そうに眺めているとマロンが得意げに説明する。
「薬を入れるとグニャグニャ~って根っこの形が変わって葉っぱとお花が咲いて物凄く面白いんだ! お前は見れないけど!」
「へぇ~。マンドラゴラで薬の中身が分かるんだ? この枯れちゃったやつが毒入り……あとは全部一緒だもんね」
挑戦的なマロンの言葉を軽く流してマンドラゴラの写真を眺めて感心していると、マティが挑発に乗ってこなかったのが気に食わないのかマロンはソファーの上に立ち腰に手を当てて更に得意げに話す。
「似てるけど全部一緒じゃない! お前の目は節穴!」
「えぇ!? どこに違いがあるの?」
マティが驚く前にリックが写真を奪いマロンに駆け寄り問い詰めると、バランスを崩してマロンはソファーにしりもちをついて目を瞬く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます