媚薬回収
第30話
「話だけだと、媚薬に問題なさそうだけど……ミリーの体調不良も初めてお客さんを相手にしたからっていうのも、ありえなくはないし」
名前を付けた媚薬入りの瓶を並べて眺めているリックの背中にマティが話しかけるが、リックは返事をすることなく机の上に置いてあるリストを確認しだした。一切の説明がないままにリックが媚薬鑑定に入ってしまったのでマティは暇を持て余す。
「見た目や香りからはどれも問題なさそう。ただ……量が」
リストを見ながらリックが一人ごとのように話し出したのでマティはそばにより、並べられた媚薬の瓶を見て量を確認する。
「ジュディとミリーさんのが多く残ってて、他の人のは大体半分ぐらい使ってる。これでなにか分かるの?」
「一人の客に使う量はみんなそんなに変わらない。多くても小瓶二個ってとこだよ」
「あっ、ミリーさんからローランドが使ったっていう媚薬の瓶を渡されたんだった」
変な緊張感となかなかの刺激的な話にすっかりミリーから渡されていた小瓶をポケットから出してミリーの名前が付いた瓶の前に置くとリックがマティを睨む。
「しっかりしてよ。他には何もない? ミリーと話したことで僕に言い忘れてることない?」
「ゴメン。話した内容は……獣みたいだったっていうのと、最低な囁き……」
「その獣みたいだったっていうのは具体的にはどんなことされたって言ってたの? あと、最低な囁きっていうのはなに? もしかして、また薄い情報だけ?」
ジュディのことでショックを受けているリックに聞かせるのはどうかと思ってミリーからの話を濁してしまったが、調査している以上はどんな情報も知りたいのは至極当然と言える。
「獣みたいだったはそのまま。最低な囁きは、あんな年増の女は止めてお前を変わりに身請けしてやるって……少なくともミリーさんは戯言だって真に受けてなかった。むしろ、ジュディさんの心配をしてた」
「ジュディはもう長いんだ……客が言う言葉が嘘か本当かなんて分かってるよ」
「それじゃ、ローランドが身請けをするっていう話は本当ってことになるけど……なんか引っ掛かるよね」
ジュディの人を見る目はリックが言うように仕事柄、優れているように思える。リックの事件のことだって知っているのに何故、ローランドなのか。
「後でどうなっているのか兄さんに聞いてみる。ミリーの薬も作らなきゃ」
「私も手伝うよ。ねぇ、ちなみに高級娼館で一泊ってどのくらいの値段なの?」
「最低でも金貨5枚以上かな……諸々で値段は変わるから」
「そ、そんなにするの?!」
庶民の暮らしでは、あまり銀貨を使うことも貴族のマティでも金貨自体ほとんど見たことが無い。
「高級娼館と謳っているから、それなりの金額じゃないと……それに娼婦達の借金は膨大だからね」
「リックって貴族と変わらず相当のお坊ちゃんじゃない」
「娼婦の借金の肩代わりに国が係わっているからある程度、管理されてるし貴族のように好き勝手にお金が使える訳じゃないから、庶民の暮らしより少し良いくらいじゃない? それに、高級だろうと何だろうと所詮、娼館と周りから、からかわれるだけだよ」
マティの質問に答えながらもテキパキと必要な薬草を棚から選びミリーの薬を作っているリックの姿は幼さを忘れさせる。
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