第29話
「あの、ジュディさんはデイビス・ローランドとなにか特別な関係でもあるんですか?」
ミリーから身請けの話が出ていることは聞いてはいたが、ミリーだけの話を鵜呑みに問い詰めてしまえばジュディは何も話さなそうだと知らないふりで聞く。
「そうよ。ローランドは私が骨抜きにして学術院を卒業したら私を身請けするって約束してるのよ」
「そんなの駄目だ! なんでデイビス家の男に身請けさせるの?!」
俯いていたリックが吐き捨てる様に話すジュディに怒鳴った。ジュディは怒るでもなく、優しい眼差しでリックの頭を撫でる。
「私も、そろそろ自由になりたいんだよ……」
「だけど……デイビス家になんて嫌だよ」
リックはマティよりもずっとジュディの言葉の重みを分かっていて、それでも駄目だと叫ばずにはいれなかった。酷い男だと分かっていて、そこにジュディの幸せや自由が本当にあるのかも疑問だ。
「それ、本気にしてるんですか?」
「ミリーにも同じこと言ってたとか? 初めてのベッドでの囁きを信じてるなら、おめでたいわね」
鼻で笑って言い捨てるが、事実はミリーはローランドの囁きなど信じてもいないし、ジュディの心配をしている。骨抜きにしているとまで豪語する熟練高級娼婦のジュディにマティがそれ以上なにが言えようか。
「まぁ、私のことはもういいでしょう? それよりも今日は何しに来たの?」
ローランドについての話はこれで終わりだとジュディが話題を変えてリックの顎に指を添えて自分に向かせた。
「うん……今日は、店の媚薬で体調崩したりしてないか調査しにきたんだ。僕のレシピだし、心配だから……いま持ってる媚薬を回収させて」
「私は問題ないけど……どうぞ」
ベッドサイドに置かれていた瓶をリックに渡すと、ジュディがおもむろに大欠伸をする。
「ごめん。リック坊やともっと一緒に遊びたいけど、少し休むわ」
「うん。ゆっくり休んで……ありがとう」
リックとマティは媚薬の入った瓶を回収するとすぐに部屋を後にし、他の部屋にも周り軽く会話した後に媚薬の入った瓶を貰いリックの部屋に戻った。
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