第47話
「私の処分は牢屋行き? それとも別の娼館に売られるのかしら?」
「ジュディは処分なんて受けないよ。あんな奴は死んだって良かったんだ……ただ、ミリーには謝って」
「分かったミリーにはちゃんと謝るわ。だけど、処罰もきちんと受けるステムも巻き込んじゃったし……きっとオーナーに怒られちゃうわね。もう少しで自由だと思ったのに
失敗しちゃった。ごめんねリックの作った薬を悪いことに使って」
ジュディが必死に涙をこらえているリックの頭を撫でようとすると、その手から逃げる様にまたリックが部屋を飛び出して行ってしまった。
「あぁーあ。リックにまで嫌われちゃったわね」
苦笑いを浮かべてまたベッドに腰を落ち着かせると、俯いたまま肩を震わせるジュディの姿にマティはもう一度話す。
「違うと否定しましたが、リックのためですよね? ジュディさんがローランドに身請けされて妻になればこの娼館から、リックから手を引かせることが出来ると……手を引かすことが出来なくても事前に情報さえ押さえておけばリックを守れるから。でも、そこまでリックを大切にしている理由はなんですか? 借金返済も間近なのに……」
しばしの沈黙後にジュディが顔を上げてマティに優しく微笑んでから、座るように椅子をすすめる。
「本当に自分のためなの……もう少しで自由になるから」
「自由を得るために頑張ってきたんじゃないんですか?」
「そうだったんだけど、いざ自由になっても娼婦としてしか仕事をしたことがないのに、この先どうやって生きていけばいいのか分からない……」
「家族のもとに戻ることは出来ないんですか?」
至極当然のように提案をするが、ジュディは困ったような顔を見せて首を横に振る。売られたことで、家族を憎んでいる可能性もあるが体を張って家族を守ったジュディを向かい入れることは当然のことだ。
「どこに居るかも分からない。最初の2年間は借金返済になんとかお金の工面をしていたみたいだけど、それから後は手紙もお金も何も無いの。売られた挙句に捨てられたのよ。だから家族ともう一度暮らしたい夢は叶わないし、それならせめて姉のように慕ってくれていたリックのために何かしてあげたかった……そのぐらいしか生きる意味を見いだせなかったの。でも、それも叶いそうにないし一生、体を売って生きていくしかないかもしれないわね」
人生を諦めてしまっているジュディになんと声を掛ければいいのか分からずにマティは俯いてしまうと、部屋のドアがノックされ視線を向けるとステムが立っていた。
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