第46話
「ねぇ、媚薬に何を混ぜたの?」
大分落ち着いたリックが質問するとジュディは媚薬の瓶を取り出した同じ場所から小さな紙に包まれた袋を出して渡す。リックが受け取りすぐさま中身を確認して拳を振るわせる。
「これ、マンドラゴラだよね……どこで手に入れて、なんで混ぜようと思ったの? 誰かになにか聞いたの?」
「マンドラゴラを少し多めに体内に入れると気持ちよさが倍増するって、お客から聞いたことがあったから……ローランドが私に夢中になるようにするには、体で快楽を与える以外に何も手立てがないんだもの仕方ないじゃない」
「加えられたマンドラゴラが少量だったから具合が悪くなっただけで誰も死なずに済んだけど、この袋に残った分を入れてたら死人が出ていてもおかしくなかったよ? ジュディが死んでたかもしれないんだよ!」
「私は死んだって別に……でも、具合が悪くなったってミリーの体調不良は関係ないでしょう?」
悪びれることもなく自分が死ぬことについてはあまり頓着が無いようだったが、何故だかミリーの体調不良について否定してくることに、リックがまた顔を歪める。
「あの媚薬はやっぱりジュディが渡したんだね……」
「私と使うはずだったのに取られたの! ローランドとベッドに入って、何の気なしにミリーの処女が今日買われたって話をしたら媚薬の瓶を持って飛び出して行っちゃったのよ……そんな私の媚薬のせいで体調不良になるなんて思ってなかったから、初めての客で具合が悪くなっただけだと思ってた」
「ジュディが聞いたって薬は麻薬だよ。それでさえマンドラゴラの量や別の薬草の配合も決まっているんだ。本当に今回は運が良かっただけ……」
俯いてリックの話を聞くジュディに嘘は感じられないが、死も受け入れていて、借金もあと少しで返済が終わるのに、やはりローランドに対する執着が不可解だ。自由を得るためだでは為ではないように思え首を傾げて考えていると、一つの答えが頭に浮かぶ。
「もしかして、ローランドに執着するのはリックのため……」
浮かんだままの言葉をマティが呟くと、ジュディ今まで見せなかった動揺の色を見せて大袈裟に笑って否定する。
「ハッ、なにがリックのため? 一日でも早く自由になりたいし、ローランドは馬鹿野郎だから一番誘惑しやすかったかだけで、リックなんて何も関係ない!」
リックはなんだか分かっていない様子だったが、マティはジュディの反応で自分の考えが繋がった。ジュディはリックとデイビスがトラブルになっていることを知っていて自分がデイビスの家に入り込むことでリックを守ろうと考えているのではないか。
(リックを守るためっていうのが一番納得できるんだけどな……でも、そこまでリックを守る目的はなんだろう?)
答えが出たと思ったが、すぐに別の疑問が湧き頭を悩ませていると、ジュディがもう終わりだと言うように座っていたベッドから立ち上がる。
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