仲間
第59話
昨日は医務室でリックと別れてから、事情聴取で顔を合わせるかと思っていたがすれ違うこともなかった。
事情聴取もククリナイフで切られ首を絞められたというマティの供述をを元にサディスの暴行と殺人未遂の容疑固める為だと本当に簡単な聴取で終わった。
サディスは長年、睡眠不足に悩まされていた時に、高級娼館で会ったリックが強力な睡眠薬を作ってくれたことに、歓喜して難癖をつけてリックをさしだすように脅していたが、バーレスク夫妻は頑として脅しには屈することなくリックを守っていた。
そこからサディスは睡眠を求め、知らず知らず危険な薬にまで手を出してしまっていたという。しばらくしてローランドが娼館に出入りするようになり、同じ学術院内にいるリックのことを案じてどうにかしようと、ずっとサディスの動向を調べていたバーレスク夫妻が今回のことで、近衛兵に相談して裏で麻薬を扱う組織の存在が分かり国からも積極的に動いてもらっていたらしい。
捕まったサディスはカリオに氷漬けにされ、全身が凍傷のようになり、皮肉なことに昏睡状態となっている。長年眠れなかったサディスには良い結果だったとも言えるのではないだろうか。デイビス家についてはまだ調べが続けらえているが、麻薬を扱う組織と共に遅かれ早かれ捕まるのは間違いなく、爵位剥奪の上、家族も国外追放だろう。
取り敢えず心配するような危険は去り、疲れは精神的なものだけで傷も一晩寝てほとんど分からない位に回復していマティは朝一でリックの部屋に向かおうとドアを開けたところでカリオにばったりと出会う。
「あの、なんでカリオ先輩も一緒に来るんですか?」
「俺も気になるから」
朝からカリオが心配してマティの部屋をわざわざ訪ねてくれたことを聞いて内心ウキウキとしているマティだったが、平静を装いカリオの隣を歩きリックの部屋の前で止まる。
「おはようリック! 具合はどう?」
ドアをノックして声を掛けるがうんともすんとも返事はなく、ドアに耳を近づけてみるが物音すらしない。
「動けないとか?」
嫌な予感にカリオに視線を向けると溜息を吐いてマティよりも激しくドアを叩き声を掛ける。
「おい! 見舞いに来てやったぞ開けろ!!」
力づくで開けようとドアのノブを掴んでガチャガチャと回すと、ドアが光り文字が浮かび上がりカリオが声に出して読む。
「おはようマティ。この鍵でクロノスの扉を開けて……なんでマティ限定のメッセージなんだ?」
不機嫌なカリオの前にドアから鍵が現れマティがキャッチする。リックとマロンが緊急用に持っていた特別な鍵によく似ているが今回はどこの鍵穴でもいいわけじゃなさそうだ。
「どこに行く鍵なんだ?」
「どこですかね……クロノスの扉を使うってことは学術院内だと思いますけど」
通ってきたばかりのクロノスの扉に戻り指示通りにリックの鍵を使ってクロノスの扉を開けて通ると、雑草だらけの広場が広がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます