第12話
「倒した? 攻撃後の視界の悪さは考えてなかったな……グロム! 次の攻撃準備してる?!」
水蒸気が霧のように視界を遮っていてゴーレムの様子も分からないが、返事のないグロムが気になる。
「マティ! 気絶してる。2撃目は難しいぞ」
段々と晴れてきた霧の中、ウォルターの声が聞こえた方向を見て愕然とする。グロムは恐怖のあまり力の制御せずに全力の一撃を放って、自分の魔術に感電したのだ。それでも、ゴーレムが倒せていれば問題はないだろうと前を向くと、マティのすぐ横の地面がものすごい勢いで打ち付けられて砂埃が舞う。
「ヤバイ! まだ倒せてない。ウォルター、グロムを連れて下がって!」
ゴーレムの攻撃で霧が晴れその姿が見えると、ゴーレムの下半身は見事に崩れ上半身のみが残っていて所かまわず残った両腕で周辺をタコ殴りしている。
「しぶといなぁ。ウォルター、二人で止めを刺そう」
「弱っているとはいえ、俺の攻撃じゃあまり意味がないかもしれない。マティの攻撃が有効だと思うがこれじゃ近づけないし、マティが剣に魔力込めてる時間稼ぎもそんなに出来そうにないぞ」
「あのゴーレムこっちを認識してないから、動きを少しだけ……あの腕の攻撃だけ止めてもらえればいける!」
マティは剣を構えて魔力を込め始めるが、ふと思いついたようにウォルターに向き直り質問する。
「剣を凍らせることって出来る?」
「出来なくはないが、細かい調整はできない、剣を握ったままじゃ手も凍るぞ」
「いいよ。多分、そのぐらいで丁度いいはず!お願い」
ウォルターが頷いて魔術を掛けると、言っていた通りに剣ばかりがマティの手まで氷ついた。マティがニッと笑うと、髪をまとめていたバレッタが弾き飛び、鬣のように髪を広げ一気に魔力を剣に注ぎはじめ、見る間に凍り付いた剣の内側から火が噴き出す。
「ウォルター援護お願いね!!」
言うやいなやゴーレムの残骸を踏み台に獅子の跳躍を見せてゴーレムの頭めがけて燃え盛る剣を振りかぶる。ゴーレムの両手がマティを挟み込もうと動くが、寸前のところでウォルターが水の壁で防ぐ。
「砕けろぉぉぉ!!」
マティの剣がゴーレムの体を一刀両断し、辺りに轟音と土埃が舞う。土埃の中に薄っすら見える人影にウォルターが声を掛けて駆け寄るとマティが剣を構えたまま固まっていた。
「マティ、やったな! マティ?」
動かないマティにウォルターが心配になり肩を叩くと満面の笑みでマティに飛び掛かるように抱きつかれよろける。
「やった! やったよウォルター! 最後まで剣に魔力を込めたままで切れた! 手も火傷してないし!」
ゴーレムを倒したことよりも自分の魔術合成が上手くいったことが嬉しすぎて、我を忘れて抱きつくマティをウォルターは引き攣った笑みを浮かべて引き剥がし、クリスタルの回収を促す。
「だいぶ早く終わったな。グロムは気絶しているから俺が背負っていく」
「それじゃ、私はクリスタル回収してくるからグロムのところに行ってて」
瓦礫の中から3つのクリスタルを探し当てウォルターとグロムがいる場所に戻ると、グロムの額には濡れた布が置いてあり、怪我はしてないようだが苦悶の表情を浮かべている。
「これ、クリスタル。二人には結構無理させたよね。私は、まだ体力有り余ってるから私がグロム背負っていこうか?」
「いや、グロムを背負うくらいは問題ない。戻る間に襲われたら俺じゃもう魔力量も大して残ってないし対処できない方が怖い。悪いがマティは俺たちを護衛してほしい」
「もちろん! だいぶ早く終わったから加点貰えるかもよ。急ごう」
ウォルターはすっ飛んでいったマティのバレッタを渡してグロムを背負うと来た道を戻る。ここに向かう間も森に元々、生息している生き物にすら合わなかったので戻りも楽そうだ。案の定、何の障害もなく無事に出発地点に戻ることが出来た。
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