第54話 【自律兵器】根国の姉
クレイドルへはローズの勧めもあって、マダイジュの騎士から貰った騎士の肩マントを付けていく。
同盟国の関係者だと一目でわかったほうが、襲撃直後で殺気立っている民衆からの危害を受ける危険を遠ざけることが出来て、安全らしい。
「凄い根っこだね?大きいな〜!」
おねえちゃんが見上げている、黒煙登る根が全てを覆っている国へイーグルから降りて進んでいく、これも民衆を混乱させない為で、ドラゴンに襲われていたので空飛ぶものを恐れると考えたからだ。
しかし、到着したクレイドルからは俺達の戦いが見えていたらしく、特にイーグルは最初からずっとドラゴンを引き付けていた上、目立つ銀色をしているので銀の鳥様なんて言われて崇められている。
この一件で勇者の……おねえちゃんの乗り物としての地位を確立したイーグルに対抗心を覚えるが、おねえちゃんを頂点とする良い同僚の出世を祝福しようと思う。
龍に滅茶苦茶にされて災難な国の現状を鑑み、歓待の方は断らせてもらって、空いてる場所で横から見ているイーグルや愛しき人と共に自炊だ。
不足はしていないという水や魔樹の樹液は分けてもらって、おねえちゃんが前に購入したマンマルの素になる白い穀物を専用の道具で蒸しながら、おねえちゃんとマンマルに何を入れるか相談する。
「マンマルに何を入れようか?」
「新芽を甘く煮た奴が良いなぁ〜」
パンにドライフルーツを入れることもあるし、それと同じで穀物に甘いものを入れるのは良い感じになるのかな?
後は少し勿体無いけれどドロップしたドラゴン肉でも、焼いた後に細かくして入れればいいだろう。
龍に焼き払われた場所で、あんまり豪勢な食事を見せびらかすのも気が咎めるという物なので、見た目は質素に中身は豪華な感じで行ってみよう!
□これがアレのお肉……柔らかいですね?□
しっかりとドラゴン肉を焼き、覗き込んでいるイーグルが驚くほどにとんでもなく柔らかいこの肉を縦横に等間隔で切り分けたら、皿に置いて冷ます。
横を見るとおねえちゃんは白い穀物の蒸し加減に満足したみたいで、オーヴァシーで買った大き目の木皿にひっくり返して、フォークを使い平らに均して熱を飛ばしやすくしている。
「ローズに聞いたんだよ〜。 美味しくできそうだね〜?」
「そうだね」
おねえちゃんとご飯を作りながら笑っているとこの国の責任者と話し合っていたローズが帰ってきて成果を教えてくれた。
「誘導弾の代金は同盟で持ってもらえそうね」
「それは助かった」
特に俺は二人の二倍の発射数だから、とても……とても! 気になっていたんだ。
作り始めていた魔樹の樹液煮がいい感じに焦げ、幸せな香りがし始めたので新芽を投入して絡ませ、馴染んだら鍋ごと火から下ろして完成。
「マンマルに入れるから駄目だ」
ローズが物欲しそうに見ているが、夕飯なので先に止めておく。
下ろした鍋の中身を混ぜるとおねえちゃんまで覗き込んでいる。
「おねえちゃん……駄目だよ?」
断腸の思いで静止するとおねえちゃんは残念そうに諦めた、横で才女がありえないものを見たような顔をした。
「クロ?変なものでも食べたの?クロがチェルシーを止めるなんて珍しいわ」
「これをマンマルに入れるのも、おねえちゃんの願いだからね」
頷いて「なるほどね」と得心のいったローズはそういえばと切り替える。
「あの宝石が売れたのだけどどう分ける?」
「ローズに任せるよ~!」
「俺も任せるよ」
少し考えたローズが任せた俺達に提案したのは、凄そうな装備の導入だった。
「副腕バックユニットの導入を考えているわ」
ローズの話によると、魔導鎧自体が副腕で攻撃補助をしてくれる装備で、機械槍のリロード補助に始まり、武装をマウント出来たり終いには機械槍をマウントしていると自己判断で援護射撃を始める。
元々は魔導鎧にあるアームキャノンの給弾機構を改造して作られていて、アテナで行われている殺人機械……自律魔導機械研究の結晶らしい。
「すごいねぇ~!」
おねえちゃんは陽気なものだが、同じような存在が横にいる。
□当機の先祖みたいな装備ですね~!□
二頭身のおねえちゃんも陽気にしている。
「ただ、クロの機体はバックユニットに対応してないから、資金を繰り越して装備更新は今度ね?」
少し残念だが、対応していないものは仕方ない。
その後は、具材を白い穀物に包んで出来上がりのマンマルを並べていただく。
「ドラゴン肉を入れてしまうなんて・豪華だね・・イイネ・・・」
アルテがこちらの意図を汲んでコソコソといつものテンションを表明している。
新芽の樹液煮もほんのりと甘い味のする白い穀物によく合って、こちらも良い感じに出来上がっている。
「おいしく出来てよかったね~!」
「穀物だから、今度こそ食べ過ぎないようにねチェルシー?」
おねえちゃんも喜んでいるので、マンマルは大成功だ!
夕食後クレイドルでの夜は、狭いが野宿の様にイーグルの背中にあるコンテナ内に、毛布を敷いて皆で眠った。
夢を見ている。
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