第11話 【能力鑑定】熟練の姉
「ナンバー20! 何が黒き聖剣だ……旧型風情が! この盤面で何ができる! デリートしてやるぞGHQの犬が!」
意識が浮かび上がると、ひどい夢を見ていた気がする。
そして目の前には心配そうなおねえちゃんだ。
手のひらで額の汗をぬぐう。
まずは……。
「おはよう、おねえちゃん」
「おはよう~クロ!」
#####
キッチンでおねえちゃんに火の出し方を教えている。
「黒いのが火付け」
実際に回して付けて見せる。
「おお~簡単!」
おねえちゃんが何度も付ける。
多分大丈夫だと思う……。
「黄色いのが火の勢い」
おねえちゃんを一旦止めて、実際に火の勢いを変える。
「すご~い楽!」
凄い勢いで火の高さが変わる!?
性能を超えてるような?
「白いのが消火」
火が一瞬で消える。
「ええ~大丈夫なの? 砂を被せなくて平気?」
火の元には心配があるみたいだ。
「物を燃やしている訳じゃなく、魔法の火だから大丈夫だよ。」
「ローズの言ってた魔道具だ~!」
どうやら、おねえちゃんの
その後、おねえちゃんと一緒にパンを焼いてダイニングで食べる。
「毎日がお祭りだ~!」
そのうち飽きるかもだけど、本当においしい!
もう、成り上がり成功でいい気がするよ。
「今日はスキル検査に行こう」
「楽しみだね~!」
約束してある検査にはいくけど、変なことにならないと良い。
おねえちゃんのガントレットを付ける手伝いをしたら、傭兵ギルドへ出発だ。
俺の鋼の理性は絶好調で、こっちも皮の小手をしたまま手伝うのは名案だった。おねえちゃんはザラザラするって嫌がったけど、押し通させてもらう。
さすがに恥ずかしかったのかグリーブは一人で装備していたけど、俺も対処法が思いついていないので助かった。
このマイホームはギルドから大通りを通って徒歩5分なので、裏道を通れば更に早く到着する。
ちょっと暗いけど、アレスは衛兵隊が苛烈で、スラムを形成したりするとすぐに解散される。
スラム作りを目論む人は後ろ暗い人物ばかりなので、良く衛兵舎前の首台に晒し首にされている。
都市アレス衛兵隊の隊長はレベル10の極まった戦士で、まともに成り上がれない人が対抗するのは不可能だ。
先行者が制圧済みで、悪人が栄える事が難しいのは良い事だと思う。
薄暗い路地をおねえちゃんと見て、そんなことを考えていたらギルドに到着した。
#####
受付にスキル検査の事を話すとあまり使われる施設じゃないので、すぐ通される。
傭兵ギルドのスキル検査室にはレベルチェッカーを机くらいにしたものが置いてある。複製できていない発掘魔道具なので貴重らしい。
スキル情報が流出するのは危険なので、信頼深いアレスの衛兵長マルス氏が立ち会ってくれる。
気さくな人で、呼び名は衛兵長でいいと言ってくれる。
衛兵長自身もアレスの衛兵長として誇りを持ってるんだろう。
アレスの衛兵隊はこの大陸最強の戦闘集団で、全員がレベル8以上の魔軍だ。
故郷の村も都市付近は補助が少なくなるのにアレスの近くに作るはずだよ……。
そんなこともあったけど実測だ。
おねえちゃんがすぐに金属に覆われた手のひらを置いた。
見たまんまだけど、説明聞かないのね……。
画面に出たのは『ウェポンマスター』の文字。
「つよそうだ~!」
う~ん名前から想像できる効果の範囲が広すぎるヤバいスキルだと思う。
衛兵長もここまでの物は滅多に見ないのか目を見開いている。
次は俺、皮小手の手のひらを置く。
画面に出たのは……『ナンバー20』だ。
最近見る夢と関わりがあるのだろうか?
「がんばろう~クロ!」
衛兵長の話だとエラーらしい。
効果が発揮されてれば十分かな!
あの変な夢さえ見ていなければ!!!
なんかすごい眼の敵にされてたし、絶対に関わりたくないぞ!
おねえちゃんがどの程度、武器を使えるのか検査室の隅で見てくれる事になった。
構えとかで、大体わかるらしく大戦士ってとんでもないな。本人は年の功だって言ってるけど若々しいまま年の功が出来ちゃうのヤバい。
とりあえず、俺のナイフを持つと急におねえちゃんがいつもと違う構えを始めた。
多分俺の真似だけど、おねえちゃんのほうが洗練されている気がする!?
勉強になります。
今度は衛兵長さんが槍を渡したら何だか見たことがある構えだ…衛兵隊の構えかな?衛兵長さんが筋が良いと嬉しそうに調整して、最強集団の構えのお墨付きを得たみたいだ!?
真剣に槍を握るおねえちゃんが遠くなってしまった気がして。
「おねえちゃんすごいよ……」
思わず言葉が漏れる。
いつもの言葉なのにいつもと違って、ちょっと嫉妬を感じていたみたいで、そんな自分に失望を覚えて落ち込む……。
「クロだってすごいんだよ!」
落ち込む俺に「おねえちゃんは知ってます」と純粋に褒めてくれる。
悪い気持ちが溶かされてしまう、悪い俺が善い姉に溶かされて、失望とか嫉妬とかどうでもよくなる。
「ありがとう……!」
衛兵長さんは微笑ましそうに見ている。
恥ずかしいところを見せてしまった!?
「力の差は時として絆を壊すからな。お前たちはそんなことになるなよ?」
よく見るんだ、と高レベル者特有の苦い経験を感じさせる言葉をもらった。
戦士として長く生きていると、色々あるのかもしれない。
……。
あんまりおねえちゃんは分かってなさそうだけど俺は共感できてしまって、俺も夢で見るような嫌われ化け物だったらおねえちゃんを傷つけそうで怖い。
まぁ! 実際の俺自身はおねえちゃんの荷物持ちな訳で大丈夫だ。
目的も果たしたのでスキル検査室から出ると、受付の人が俺達への来客を告げる。
遊びに来るついでに、ケガを治しに来たらしいローズだ。
腰まである豪奢な金髪に怒っているような赤い釣り目が、傭兵ギルドのカウンターで何だか浮いている。
服装はアテナ学園の茶色のブレザーにコンパクトな体を収めているけど、いつもよりコンパクトな気がして痩せたのかな?
「ローズ~! ひさしぶり~!」
おねえちゃんが突っ込んでいく、その後を俺がついていくとローズが振り向いた。
「チェルシー……久し振り、ありがとね」
いつもより弱った笑みを浮かべるローズには右腕が無かった。
――あとがき――
おねえちゃんのスキルが判明した次は、思ったより重症のお隣さんです。
次のお話はおねえちゃんと、お隣さんを中心に重傷を治す為に行動していきます。
ここまで読んでいただけて、とても嬉しいです。
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