第15話 【秘密会合】腕枕の姉
「心当たりがあるのね。ナンバー20は夢によく登場したわ。人の夢で大活躍ね?」
「夢でも恐ろしいほどに」なんて言ってくる。
俺が夢を見たのは戦い始めたここ数日だけの上、目の敵にされてボコボコになっていた。
「大活躍? 相打ちして、撃たれて、囲まれただけだ。無関係じゃないか?」
夢なんだから、そんな大活躍する所を見たかった!
いつも断片的な悪夢だぞ!
「あれが相打ち? でも符合しすぎてる。他は?」
他なんてないぞ!
最近のは冷や汗物でおねえちゃんを心配させてしまった。
「立士になってから見始めた3回だけだ」
ローズは赤い眼を見開いて驚く。
「私はたくさん見てるわ。情報共有しておいた方が良さそうね」
数回で参ってる俺はローズの発言に驚いた。
「あんな夢を何度も見てるのか!? よく持つ」
「今回はダメだった。不注意の事故で腕を失うなんて失態だわ」
これは、お互いに気を付けないと危ない。
悪夢を見せてくるスキルか。
「お互い気を付けよう」
「そうね、情報共有方法はどうする? 私はチェルシーに知られたく無いわ」
俺はローズのスキル名と俺のスキル名の響きに注目した。
「俺もおねえちゃんには心配をかけたくない。 無線言葉はどうかな?」
ローズが赤い目を見開いて善き哉を叫ぶ。
「それよ! ダイニングで無線言葉を教えている体にすればいいわ!」
安心したような顔のローズ。
待ってくれ、そこまでの無線言葉についての知識は持っていないぞ。
「本当に教えるから大丈夫よ。 正直何度も密会するのはチェルシーに悪いから」
密会?
……一つの部屋に男女二人?
……。
「話は終わりにしようか」
唐突だがおねえちゃんを見に、ドアへ向かう。
「夢の話の時は頼むわno20 this is no2 よろしくover 」
ちょっと楽しそうなローズに言われる。
無線言葉の勉強をついでにやればいいか。
「no2 this is no20 こちらこそ out」
おねえちゃんがパンを焼く香り漏れるダイニングへ扉を開く。
「おねえちゃん俺も見ていい?」
「いいよクロ、ローズ大丈夫だった~?」
「大丈夫だわチェルシー」
おねえちゃんが新しい冊子を見ているので、俺も横から見せてもらう。
――――
・騎士は5つ目のレベル、レベル5の事です。
・騎士になったあなたは戦士としては熟練にあたります。
・名前の通り、あなたは他国の切り札である騎士と同等です。
・収入面では従士から日給、時価となります。これはあなたが戦士としてあるための収入となりますので、更に戦士的にあれるように向上心を持ちましょう。
――――
顔を上げるとローズもおねえちゃんの向こうで見ている。
「騎士ってなに~?」
おねえちゃんの質問が飛ぶと、さっきまでの話で少しやつれていたローズが、復活して説明し始める。
「私たちの住んでる都市アレスはガルト王国という国に所属しているわ」
「そうなんだ~」
おねえちゃんは聞いておいてあんまり興味がなさそうだ。
国とか村に住んでると関係ないからね。
それにしてもローズが生き生きしている。
「ダンジョンは平原部で生まれる。そしてガルト王国はこの大陸の平原部を独占してるわ。結果として他国にはダンジョンが無いから、レベルを上げにくいの。侵略しても得るものがないから放置してるのが実態ね」
悪人を制圧してると思っていたが他の国も制圧済みか。
「他国が頑張って育てているのが騎士と言う訳か」
ローズが口を挟んだ俺を睨んでくる。
平常運転になったな。
「そうなの~?」
「補足があるとすれば、南のアギア共和国に関してはドラゴンが繁殖してるから注意が必要ね。でもアギア共和国に暮らしている獣人の戦力は、平均が高いけど突出した者は少ないの。代わりに特殊能力を持っている者がいるわ」
「特殊なの~?」
おねえちゃんが興味を持ったみたいだ。
「空を飛んだり、自前の武器を持っていたりね。多彩すぎて説明は難しいわ」
「空を飛べるのか? あの土地で」
ドラゴンの多いあの土地では……と考えて聞いておく。
「訓練できないから飛べないわ、飛ぶために軽くて、早いだけね」
「かわいそうなんだ?」
おねえちゃんが気にして緑の目を見開いてる。
俺にはどうにもできないので、ローズに期待をこめた顔を向けた。
こちらを赤いジト目で見たローズはおねえちゃんに事実を告げる。
「アギア共和国は、ガルト王国に攻め続けてる国の一つよ。敵ね」
「敵なら仕方ないね~」
なるほど!
種族ではなく国家で一括りにするのか、流石ローズだ。
俺も便乗しよう。
「敵は倒さないとね」
ローズの達成感溢れる顔が、印象的だった。
#####
食事を終わらせた俺たちは、寝ることにした。
当然、おねえちゃんとローズが一緒だ。
久し振りの平穏に水桶を使って体を拭いていると、急にドアが開いた。
来たのは、おねえちゃんだ。
もしかしてローズのやつ、おねえちゃんに放置されて……。
薄着のおねえちゃんが、必死に体を隠す赤いネグリジェを着たローズを引っ張っている。
「チェルシー!? 私は向こうで良いわ!?」
俺も無理だし、ローズも抵抗できていない。
鋼の相棒の指令で背を向けて確認する。
「いったい何を?」
「クロも一緒に寝よ~!」
本当に一体何!? ローズ! 何を吹き込んだ!?
おねえちゃんに肩をつかまれて俺のベッドに連れ込まれる。
ローズはおねえちゃんの右手の方で急いで布を体に巻いている。
俺は左手で左肩を持たれていて、ローズは右手で右肩を持たれた。
そのまま、3人で俺のベッドに吸い込まれる。
これは……小さいときに3人でやった。
おねえちゃんの腕枕だ!?
腕に肩を引き寄せられて、おねえちゃんの上に向いた大きな胸が押し付けられる。
おねえちゃんは黄緑が丸出しなのに気が付いたらしく、横着して俺に頼んできた。
「クロ~裾を直して~?」
肩を離してくれないので手探りで裾を直してあげる……。
余計なところに触れて俺の相棒は早くもボロボロだ。
「んふふ~、くすぐったいよ」
ローズの目を見る。
どういうことだ?
ローズはおねえちゃんに引き寄せられて布が剥げて肩ひもがズレたのか首を振って結構ある胸元を隠している。
被弾した相棒の指示で目を逸らし、おねえちゃんの俺を見る緑の目と合う。
「おねえちゃん、これは一体……」
「久し振りに一緒に寝ようね~」
「ローズは……」
「仲間外れはダメだよクロ、今日から仲間なんだから~」
ローズの方を見ると全てを諦め、おねえちゃんにくっ付いている。
「……おやすみ」
「「おやすみ~」……」
俺も諦めることにした。
夢を見る。
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