第36話 【悪夢変化】抱枕の姉
俺達は魔道具に照らされたテラスに設置された白い机で寛いでいる。
「コレ楽しいね〜!」
おねえちゃんの見事なナイフ裁きに次々と果物達から皮が切り離されていく。
房についたまま皮の切り離されてしまったブドウをフォークでいただく。
「チェルシー、食べ難いから変な剥き方はしないの」
ローズも薄皮まで切り離されたオレンジをフォークに挿してどうしようか迷っている。
「こっちに貸して〜」
おねえちゃんに渡った皮なしオレンジは輪切りになって皿に乗せられ他の皮なし果物も輪切りフルーツに変えて交互に積んでいくと虹色の果物柱が出来上がった。
この柱を作ろうとしていたのか、輪切りを柱になるほど重ねるなんて、流石だ……!
「おねえちゃん、美味しそうだね!」
「せっかく、たくさん有って綺麗だからね〜!」
「手を出したら食べないとね。常識だから仕方ないことなの」
赤の目を細めて嬉しそうな表情で常識を言い訳にフォークを進める才女。
俺もフォークを刺そうとするとバチバチと横から音が聞こえる。
「何の音だろう?」
目を向けるとテラスの縁に光の膜が見える!?
「何事なんだ!?」
「森の中で暮らすための知恵なのかもね結界の魔道具で虫を弾いている。チャージ代も高いのにわざさわざテラスまで結界を張るなんて本当にお金がかかってるわ」
夜の森なのに快適だと思ったらそんな魔道具が…
「支援のリストにも載っていたから今後に旅は期待出来るわ」
「やったね〜!」
「ありがたいね!」
国からの支援と聞いて期待していたけれど虫よけは、すごくありがたいぞ!?
しばらく3人でバチバチと光の膜が虫を追い払うのを眺めていると、真剣な表情のローズに聞かれる。
「最近、余裕みたいだけど悪夢は見た?」
「ナンバーを運ぶ夢だったから、問題ないよ」
毎回、運搬の夢なら楽だ……と考えていると、おねえちゃんに聞かれる。
「今度はナンバー何だった〜?」
「ナンバー1だった、銀の人型で沢山の短剣を飛ばしていたよ」
「おねえちゃんも出来るよ!見てね〜!」とおねえちゃんが対抗して結界の外に出てからナイフを投げてしまう!?
「おねえちゃん!?ええ……!?」
投げられたナイフは弧を描きおねえちゃんの手元に帰ってきた!?
「誘導をナイフで……弓スキルをナイフでやるなんて、チェルシーのスキルは常識外だわ…」
ポンポンと数本でループし始めた。おねえちゃんのブーメランナイフ裁きを眺めながらローズがナンバー1を解説する。
「ナンバー1は制御能力に優れていて、無数の誘導剣を操る攻防一体の戦闘から銀牢と呼ばれていたけど、機動力が無かった。だから運搬にナンバー20が使われたのね」
ナイフブーメランに飽きたおねえちゃんが帰ってきて聞いてくる。
「牢屋なの〜?」
「銀の誘導剣から逃げられないって事。実は、私もナンバー関連のマシな夢だったのよ。もしかしたら……」
自信有りげに提案してくるローズ。
「二人共、提案があるわ」
俺の仮の聖域となったはずの木目の部屋のベッドの上に侵略者が二人いる。
おねえちゃんとローズだ。
「二人共、新婚なのに邪魔して悪いわね」
いつも一緒だった気がするが、今回は自分から進んで一緒なので気にしているみたいだが、俺にも利益のある話だ。
「問題ない。本当に悪夢を見なければ、ありがたいぞ!」
「一緒に寝ようね~?」
おねえちゃんも俺達が悪夢を避けられるかもと聞いて嬉しそうだ。
何故、俺も進んで一緒に寝ようとしているかと言えばローズが話した仮説を確認するためだ。
「腕枕の時は離れていたけど、クロと接触して寝るとナンバーの夢を見れるのかもしれないわ」
前回や前々回、みたいな移動中心の夢なら歓迎だ!
遠慮気味のローズをおねえちゃんが俺ごと抱き締めて来る。
「そんなんじゃ駄目だよ! もっと、真剣にくっついて〜!」
「チェルシー!?」
おねえちゃんが心配してくっつけてるみたいだけど圧倒的な力の差に俺達は纏めておねえちゃんの抱き枕だ。
色々、暖かいものにぶつかっているが、俺の冷静な理性は俺をシャットダウンさせた。
ぐぅ……。
「クロ!?もう寝たの!?なんてこと……」
「ローズぅ!もっと!くっつかないとね!」
「チェルシー!?」
夢を見る。
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