第37話 【真紅の夢】出征の姉

 黒い剣と赤い人型が急行している。


 =ナンバー20、お互い、西に東に大忙しね?

 =ナンバー2、機動力の関係だ。我々は速い。


 剣と人型の向かう先には破滅的な戦場が見える。


 =ナンバー20、先行するわ!付いてきなさい!

 =ナンバー2、露払いは任せた。目標を破壊する。


 二機はそのまま、戦場へ突っ込んでいった。


 意識が浮かび上がってくる。

 知ってる存在の夢を見た。

 ローズの言っていたナンバー2だ。


 目を開けると朝なのに窓からの朝日が薄暗くて、暗めのローズの赤い眼とおねえちゃんの緑の眼に見つめられる。


「どうだった? クロ? 」

「大丈夫~? ナンバーの夢だった? 」

「ナンバー2だったよ」


 赤い眼が細められた。


「戦場に突っ込んで終わった? 」見たように聞かれる。


「露払いは任せた、と」

「先行する。ついて来なさい、ね」


 ローズの仮説は当たったみたいで、おねえちゃんは喜んでいる。


「二人は同じ夢を見たんだ~! 成功だね! 」


「今後、どうするか相談しましょうか」

「一緒に寝るんじゃないの〜? 」


 ローズが切り替える様にベッドから立ち上がるのに、おねえちゃんも釣られたので俺もついて行く。


「くっつかないと駄目なんでしょ〜? 」

「どのぐらいまで有効なのか実験するわ」


 白いテーブルについて魔道具のベルを鳴らすと、暖かいタオルを籠に満載して従業員が持ってきてくれて、それを使い顔を拭く。


「コレ気持ちいいよ〜! 」


 おねえちゃんが脱いで体を拭き始めたので背を向けると肩を掴まれる。


「背中を拭いて〜? 」


「どういうことなの……? 」と顔を向ければ才女が笑っている。


 ローズ!? 何を吹き込んだんだ!


「本に載っていた。新婚夫婦の正式な作法よ」


「明るくしないとね? 」とローズが照明をつけてしまうと、おねえちゃんの眩しい白い肌が魔道具によって明らかになった。


 ありが……何と言うことを……!


 鋼の相棒に指示されて下着姿の眩しい白い肌を極力見ないように拭いていく。


「うふふ、くすぐったいよ?」


 鋼の相棒が罅割れるが無心で拭いていく。


 ニヤニヤしたローズの前でやりきったんだ……。


「拭いてあげるね〜? 」





 体を拭いた後、魔道具のベルをローズがまた鳴らせば朝食が運ばれてきて冷めたタオルは回収された。


 料金は考えたくないが……高級宿の特別な部屋は便利だな!

 

「金貨十枚だそうよ」


 …あのローズが、はしゃぐ訳だ。 こんな機会は中々に無いだろう。


 朝食の内容は茹でた上で骨抜きにされた鳥に、ゴロゴロとした果物のソースが詰められた物と焼き立てのパン、茹でられた魔樹の新芽が山になっていて朝から豪勢だ。


 それから城の宝物を見学したり、夜は魔物使いのショーを楽しんだがこの事は後日、語ろうと思う。


 一日、国賓扱いの待遇を享受して、寝る時に今度は手を繋ぐだけで試したが、夢は見なかった。


 手を繋ぐだけでは離れてしまうので、離れないようにおねえちゃんが握った手を抱いてくれていて、助けられた。


 この国での二回目の薄暗い木陰の朝を迎え、支援含めて荷物の確認をする。


 今日は出発の日、俺達は準備万端でおねえちゃんにローズもドラゴン装備に稼働状態の魔導鎧と完全装備。


 どうして省エネモードにしていないのか、というと見送りに凱旋みたいな事をするらしいからだ。


 花の騎士の効力が凄まじく発揮されているが、こんな機会は滅多に無いので便乗していく、3人+3人の6人だが気分は出征する軍隊だ。


 宿の表に出るとマダイジュの騎士たちが大木の刺繍が有る肩マントを俺たちに付けてくれる。


「緊急で授与された勇者と仲間達専用の騎士証だ。 俺達では足手纏いだが、騎士の魂だけでも連れて行ってくれ」

「任されよう~! 」


 悔しそうな騎士たちにおねえちゃんが軽く答えて、ローズを真似て俺も手を挙げ返答しておく。

 その先にはたくさんの人々に囲まれた花々しい騎士と弓の突き出た黒マント、慣れていないのか所在なさげな黒づくめの3人が待っていた。


「往こうなのだ」

 花々しい金装飾の白騎士が俺たちを導く。


「気楽にね!!」

 歴戦の龍殺しが余裕そうな顔で余興を楽しむ。


「慎重にだよ」

 勇者守る為派遣された蒼眼の黒騎士が気を遣う。


 南方に向かう旧文明の鉄橋を移植した巨大橋の沿道は人で埋め尽くされてみんな、俺達を花の騎士を見に来たみたいだ。


-花の騎士様〜!

-龍殺しの皆様も頑張って!

-新たなるマダイジュの勇者に!

-旅路の無事を祈っています!


 無数の目線と声援に見送られて頑丈な鉄橋の上に敷かれた木の床を歩んでいく橋の終わりに皆で振り返れば、巨木の上にある城のバルコニーで王様が家族達と手を振っている。


「本の中に入ったみたいだね〜!」

おねえちゃんは大喜びだ!


「チェルシー、勇者はほとんど本の中の存在よ」

ローズが現状に呆れている。


 国ぐるみで送られて、俺達はマダイジュの南方にある国家のオーヴァシーに向かう。

 巨大な橋のある国家らしいが今から楽しみだ!





――あとがき――


第二章完です。

 今章はおねえちゃんが新婚旅行を堂々と楽しむために勇者になってしまいました!次章からは魔樹の森の冒険が始まります!


 読んでいただけて嬉しいです! ありがとうございます。

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