第22話 【旧世遺構】暴食の姉
俺達は顔を見合わせると、マスタークルトの手招きに従うことにした。
被害が出ないように気を遣っていたらしく街道は無事だったので、問題なく大きな襟付きマントを羽織った老人の元まで移動できた。俺達を呼んだ老人はバツが悪そうに言う。
「小長3人とエルフか、悪いタイミングで来てしまったな。普段は長閑なんだが」
しわが深く刻まれた顔の表情を和らげた老人は頭を掻きながら続ける。
「これから宴会だ。折角だから、飛び入り参加していってくれ」
「俺の町は穀物が沢山だ。美味いぞ!」と街自慢して、老人は去っていった。
威嚇されたわけでもないのに、凄い圧力の人だ。
あれが大戦士、ローズの目指してる存在。
「マスタークルトは別格よ。大戦士の中でもレベル12の英雄クラスなんだから」
「同じ大戦士でも違うの~?」
おねえちゃんの質問に嬉しそうにローズが答える。
「大戦士にもレベルによって段階があるのは常識ね。レベル10から大戦士、レベル12は英雄、レベル15でドラゴンキラー。それ以上は例外よ」
シールド氏はレベル15だったのか!
出会った人物にそこまでの強者が居るなんて、驚きだ。
……。
立派な金属の門前で待たされてる間に考える。
外から街が見えないのは、どうしてだろうか?
建物の背が低いのか、それとも大都市のアレスやアテナと違って平屋ばかりなのだろうか?
「宴会やっほい!」
突然の宴会にアルテマは飛び跳ねて喜びを表現している。
「何が出るかな~? 焼き立てパン、鉄板屋さん、宿の甘いの! 楽しみだ~!」
おねえちゃんも、とりあえず食べたことのある物を上げて喜んでいるみたいだ。
そんな二人に対してローズが何時もの常識語りを始める。
「常識だけど、クルトの特産はダンジョンでドロップする穀物よ」
「こくもつ~? パンの材料のことだよね~?」
それにすぐ飛びついた、おねえちゃんはローズの術中だ、解説が始まる。
「クルトの町は複数の穀物ダンジョンを抱えている食料の生産地ね。だから面白い料理もある。白い穀物をイモのように蒸かして柔らかくした物を丸めて具を詰める料理、マンマルがあるわ!」
「宴会だから沢山! 出るだろうね! 面白そうだ!!」
面白がって大人しくローズの話を聞いていたアルテマが喜びの声を上げる。
門前で待たされてる間、雑談をしていると衛兵に通された。
「わぁ~すごい~!」
「これは面白い!!」
「なんだこれは!?」
「これがクルトの町よ!」
門が開かれると異様な景色が目の前に広がっていた。
驚くべき事に目の前には大河の川幅並みに巨大で底が見えないほどに深い穴が広がっており、その穴の外周に沿って下り階段が永遠と続いているみたいだ。
階段を下りながらローズの話を聞いている。
「コレは旧文明の戦艦ドッグ、元武器の整備所ね。それを町として利用してるわ!」
戦艦か、ナンバー20が無慈悲に叩き落していったモノ達だ。
ここまで巨大な整備場所が必要な相手だったのか……。
「クロ~、手をつないで行こうね?」
夢で見た犠牲者達に想いをはせていると、おねえちゃんが緑の目で俺を見つめ、微笑んで手を取ってくれる。
楽天エルフは俺たちの先頭で騒ぎまくって、階段を叩いたり。匂いを嗅いでいる。
「こんな長い階段初めて見た! 面白い!! どうやって作ったんだろう!?」
「この先には、大きなコンテナを利用した町がある。開拓のセオリー通り、効率的に旧文明の遺跡を利用している。とても参考になるわ」
進む先には、ローズの言うようにコンテナを家代わりにした街があり、一際大きなコンテナに人が集まっている。
こちらに近づいてきた女性に案内されてコンテナ内へ通される。
「マスタークルトのお客様ですね! 此方にどうぞ」
案内された席には白色の塊が山盛りになっている。
これが例のマンマルだろうか?
「これがマンマル? パンの中身みたい〜」
「アッハッハ! 山盛りだ! 食べきれるかな?」
ローズが本を片手に解説するのを聞きながら、白い塊をフォークで突き刺して頂く。
「独特の粘りがあるそうだけど、悪くなってる訳じゃ無いわ。中身には色々と入っているみたいよ。私は煮物ね」
「俺は焼き魚だ」
「僕は肉!」
「おいしい〜」
中身を教えあっている間に、おねえちゃんは気に入った様で華麗なフォーク先がマンマルを絶滅せんと繰り出される。
「凄い! フォーク早すぎ! 面白い!」
アルテマは俺と一緒におねえちゃんを見ている。
「おねえちゃん、すごいよ……」
「チェルシー、落ち着いて。穀物だから太るわ」
高速でマンマルを平らげていたおねえちゃんが固まった。
「ローズぅ〜、どうしよ〜。食べ過ぎた……」
「私に良い考えがあるわ」
固まったおねえちゃんに対してローズがニヤリと笑う。
何故か嫌な予感がするぞ!?
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