第49話 【水上演舞】人魚の姉
水泳のコツをつかんだ俺とおねえちゃんは、浅瀬船内の外周を他の皆の邪魔にならない程度に回遊して、色々な動き方を試していると蹴る足を揃えたり指先を揃えると推進力が高まったり、二人で手を取り合ったり押し合う事で、複雑な動きを水中で行えることを発見した。
「二人とも面白そうな事してるわね? 私もご一緒しても良いかしら? 」
コツを掴んできたローズが俺達の水泳研究に参入してきて、次々と新たなる技や法則が発見される!
一人が足場になってもう一人を持ち上げてしまい、そのままジャンプする技は危うく湖へ落ちそうになったので禁止された危険な技だ。
□飛び込みは危ないからやめて!? □
三人で手をつないで回ってみて回転する流れを作る技、泳ぎの勢いに乗って飛び跳ねてそのまま水面を蹴って数歩移動する技、と水泳技?は面白い技が沢山発見される。。
「水の上を跳ねて、まるで魚みたいだよ!?」
俺達は飛び出ない程度に次々と飛び跳ねて、飛び跳ねてる途中で回転したり方向転換をやっていると、黒い水着を着て長い黒髪も後頭部で一本に纏めているベクターから、魚に例えられて3人で水泳技に対する自信を深める。
「本に有ったよりも水は怖くないわね! 後は慢心しないで緊急時に対応できれば大丈夫! 」
ローズの言う緊急時を作るためにお互いに投げて回転させたりして、更に激しい動きをしていくと、横からアルテからの指導が入る。
「違う違う!横だけでなく縦の回転や捻りを加えるともっと良くなるよ!!」
銀に近い金の髪をいつものサークレットでは無く丸い帽子で纏めている楽天エルフは、身振り手振りで何だか面白半分な気もするけれど、実戦でそんなことをやられる事も有るかもしれない!
泳いで跳ねては縦横へと回転して捻りまで加える俺たちは水上を縦横無尽に飛び回り、地上に居る時より素早く動き回っている……!
―Pi Pi Pi! □あ、タイマーが鳴ったから、みんな休憩して〜!□
長時間水中に居座るのは良くないと、時間を測っていたイーグルの提案で休憩を始める。
「前じゃなくて後ろへ回転するバク転は……」
「体を回転する時、腕を真っ直ぐに〜……」
レベルアップ直後の俺たちはあれだけ飛び回っても元気な物で、休憩中に次にやってみる技の話し合いをしている。
「動きは素晴らしいけど、きっとテーマや目的を定めればもっと良くなるのだ!」
休憩の間に昼の食事として、焼き立てパンにこの先のクレイドルから取り寄せているらしい濃い目の甘い魔樹の樹液を塗られた物をを食べている、とエテルナからも高度そうな指導が入る。
「勇者のおねえちゃんを中心に、俺とローズが飛び掛かり続けるのはどうだろう? 」
俺がおねえちゃんを俺たち二人をバッタバッタと跳ね返す、勇者役に推薦するとおねえちゃん自身から待ったがかかる。
「それは少し寂しいよ? 皆で同じ動きをするのはどうかな~? 」
「良いわね」
おねえちゃんの提案は3人で動きを合わせて泳いでみせる事で、才女はそれに賛成みたいだが当然俺もおねえちゃんの打ち出した方針には大賛成だ。
「もう少し休んでから、やってみよう」
食事後に日光浴をしたりして身体を温め再開する、おねえちゃんは勇者の額当てまで装備して本気みたいだ。
勇者の額当ての力をおねえちゃんのスキルが増幅して、俺とローズまで強化してくれるので同じ動きをするのは容易だ。
「本当に強力なスキルだよ!? 」
□武器全般に効果があるとの事でした、が防具……ですよね? □
レベルアップ直後のピンクの髪を煌めかせるおねえちゃんを中心に、黒い髪の俺と金の髪を纏めたローズが挟んで並び泳ぐと、同時に飛び跳ねて体を同じ様に捻り、前へと回転して同時に着水する。
同じポーズで浮き上がれば、見ていた3人と一機に拍手されて水泳の訓練は大成功だ!
おやつ時に過酷な水泳の訓練が終わって、相変わらず出口に繋がっていた宿の巨大な船に帰り、中庭の席で雑談するのは次の国のクレイドルの事だ。
「露出した魔樹の根の下に作られている国だと聞いている」
「根っ子の下は暗そうだ〜! 」
「補足すると濃厚な樹液が特産ね。マダイジュと同じく木材よりは燃えにくい魔樹の生木を住居の建材としてそのまま使うことで、火災対策にもなっているわ」
昼に食べた魔樹の樹液は根から得ているとの話で、根っ子を傷付けても大丈夫な魔樹の生命力はとんでもないな!?
ずっと持ち歩いていて重りになっていた甘い芋を宿の人に蒸してもらい、おやつとして熱い甘いと感想を漏らして齧り付いていると、ベクターが何か冊子を持って来て机に置き、これは……傭兵ギルドの冊子だ。
「レベルアップしたし見ておいたほうが良いよ、対応するギルド冊子を取り寄せておいたんだよ」
「ありがとう」とベクターの取り寄せる伝が気になるけど、3人で感謝してレベル8の冊子を覗き込む。
その内容は嘘や冗談みたいな事が書いてある……。
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