第58話 【果物要塞】共生の姉

 □周辺に大きな熱源があります! B級って奴かな? □


 ショボさに呆れたり、狡猾さに驚いたり、忙しい俺達の罠体験を黙って見ていたイーグルが大物発見の報告をしてくれたので様子を見にいく。


「B級が関門以外に居るなんて相当ね。 エリンの森のB級はどんなモンスターなの? 」

「大きな木のモンスターで、いつも果物のモンスターが張り付いているのだ」


 ローズの質問にエテルナが嫌な事を思い出す様に答える。


 確実に多数の相手をする羽目になるモンスターとは、かなり危険な存在では無いだろうか?


 楽天エルフが楽し気にドラゴン弓の弦を張り直している。

「的のぶら下がった木なんてエルフのカモ!」


エルフのカモなのだ……」


 エテルナの様子を見ると、あまり弓は得意では無いみたいで肩を落としている。


 いつも全身鎧にメイスをぶら下げていて、飛び道具を使っている所を見たことが無い。


「適材適所だよ」

「昨日は助かった」

 珍しく落ち込んでいる白鎧のエテルナを黒マントのベクターが肩を叩いて励ますのに、ドラゴンブレスから救われたのは記憶に新しいので便乗する。


「それで木自体は何をしてくるの? 立っているだけでは無いのでしょう?」

「もちろん立っているだけでは無くて、モンスターをぶら下げたまま接近してきて、踏みつぶそうとしてくるのだ」


 ローズの質問にエテルナが答える。

 果物モンスターの一斉魔法攻撃を誘発させるような行動をするのは、完全に前衛を殺しに来ている……!


 森の中で木の姿というのも、果物モンスターの下手な擬態と合わせて、嫌な相乗効果が発生していそうだ。


「聞けば聞くほど嫌な所の目立つモンスターだわ。 対策はあるの?」

「戦闘時以外は木に擬態することに拘るから、木の床を敷いてあると潜る土が無くて近寄らないのだ」


 弓を張り直したアルテが誘ってくる。

「擬態してる間に遠くからボコボコにしよう!」


 俺達もイーグルの工場で貰ってきた機械槍で武装してるので、ちょっとした遠距離攻撃が出来る。


 ドラゴン相手には、ローズみたいに目を撃ち抜く技量が無いと弾かれるだけだと使えなかったが大体の相手に有効だ。


 言われて俺は肩にかけていた機械槍を引っ張り出し、腰にぶら下げたケースからサングラスを取り出して装着した。

 

 おねえちゃんも同じように機械槍を引っ張り出して、必要無いのにに例のファンキーなサングラスを装着する。


「お揃いだね~!」

「そうだね!」


 お揃い風な格好で準備をした俺達に、ローズが近づいてきて楽し気に機械槍について教えてくれる。


「この手元のレバーを引くと弾の保管場所であるマガジンを入れ替えられて、入れ替えたら銃身側のレバーを引いて最初の弾を装填するの」

「こうして……こうか?」

「そうそう」


今まで、大して使っていなかった俺には、初歩的な事でも教えてくれるのはありがたい、しみゅれーたーで慣れているおねえちゃんは横で頷いている。


「機械槍は旧文明兵器のコピー品というのが有名だけど、この前クロがやったみたいにそのままジャベリンレインを使えるところが優秀で広まっている武器なのよ」

「あの時は連発してしまって勿体なかったと思う……」


 機械槍自体には攻撃スキルが無いけど、弾が尽きた後の切り札として機械槍を槍に見立てて使えるジャベリンレインは強力だ。


 この前のカエルの時はどんどん拾える機械槍を消費してしまったが、しっかりと使えばローズのように大活躍できる装備なので、サングラスをかけて練習していきたい。


「機械槍はロングバレルの位置によってモード変更されるわ。 そのままだと長銃身の狙撃モードで単発の高精度、ロングバレルの位置を下向きにすれば短銃身の連射モードで連射の低精度ね」

「こうやるんだよ~」

「なるほど……」


ローズの詳細な説明の後に、おねえちゃんが機構の擦れる音をさせて銃身を上げ下げして見せ、教えてくれるので分かりやすい。


「慣れないうちの近距離戦なら、短銃身でばら撒くのがオススメね」

「すぐ弾切れになるから~。 気を付けようね!」

「なるほど」


 ローズとおねえちゃんを交えた機械槍レクチャーを受け、イーグルの案内で見に行ったモンスターは木にしか見えないが、他の木よりも沢山の果物がぶら下がっていて、あんな数に一斉の魔法攻撃を受けたら大変なことになるだろう。


 様子を確認したアルテが作戦とも言えない作戦の説明をしてくれる。


「僕が先制するから、皆も機械槍で果物を収穫しよう!」

「連射ならやれそうなのだ」

「機械槍も得意だよ」


 ベクターとエテルナもイーグルのコンテナから引き出してきた機械槍を構えて、収穫作戦に参加だ。


「本体を先に潰すと面倒なことになるから、根元を潰して機動力を削ぐ!」


 ギュルリと引かれた矢は木の下に突き刺さった。

 矢が地面に突き刺さると、木の幹に二つの目が見開かれて動き出そうとするが、矢に縫われているのか少し揺れるだけだ。


 その隙に機械槍を撃ち込んで、皆で上の果物を収穫だ!

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