第104話 【拠点改造】重機の姉(1)

 大量のテントが並ぶ拠点の一角にて。

 戻ってきた俺達は木を斬って、製材して、組み立てて、壁を量産していた。

 コレを組み合わせると家っぽいテントになるのだ。組み立て自在なダンジョン在住エルフ風の住居である。


「また斬ってきたよ~アルテ」

「ウンウン! もう少し持ってきてくれたまえ! ジャンジャンよろしく!」

「は~い」


 ……この通り木はおねえちゃんが何本も担いで持ってくるのでいくらでもある。

 丸太を受け取ったアルテが偉ぶって頷くと、目にも止まらぬ早業のナイフ捌きでスライスしてしまう。


 スライスされた木材を組み立てるのは俺とローズの仕事だ。

 ダンジョンの木は何故か一定の形状をしているので、同じ切り方をすれば形が整っていて楽だ。短期間でまた生えるし、モンスターと同じくダンジョンの生成物なのだろう。


 エテルナが壁をまとめて持って行き作業が一旦落ち着いたので、休憩のついでに夢で見たモノついて、ローズに尋ねてみる。


「ふぅ……ローズ。ナンバーの夢で妙なモノを見たから、それについて聞きたいんだが……」


「珍しいわね。最近はあまり聞いてこなかったのに」


 俺の質問に目を細めたローズは「言ってみなさい」と続きを促してくる。


「巨大な船が空へ突き進んだら、空が割れてしまってな。そこから真っ黒な奴が出てきた。アレが何かわかるか?」

「ああ、アレを見たら気になるわよね。安心しなさい。最初に言っておくけど連中はもう滅んでいるわ。正式名称はダークサイクロプスだったのだけれど……」


「あら、閉じられた空の話をしていますの?」


 楽しそうなローズを遮ったのは、飲み物を持ってきたシャルロットだった。

 ワクワクした様子を見るに、どうやら彼女も俺が夢で見たアレを知っているらしい。というか詳しそうだ。渡された温かいお茶が身に染みる。


「空を飛ぶ者達にとって空の果てに壁があるのは常識ですわ。過去の文献によるとダークサイクロプスからこの星を守るための壁だったのですが……」

「連中は強大な魔力を持つ生物だったの。旧文明が滅びたときの『神の祝福』によるレベルアップで全滅しているわ。増えすぎた魔力による魔力暴走ね。星を守る壁は今では星から誰も出さない牢獄と化したした訳」

「それらしき影がここ百年無いことは、空見の家系が持つ遠隔透視の術式により証明されていますわ」


 シャルロットの話を引き継いだローズが、お茶で口を湿らせてから俺の気になっていたことを全部教えてくれた。あんな生き物が生き残っていなくて安心である。

 あんなのが残っていたら、デカすぎて都市を一瞬で吹き飛ばしそうだ。


 しかし百年も空を見続けている家系があるのか、アレのヤバさを知っていたら気にしないで居るのは無理というモノだろうが、大変そうな家系である。

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