第47話 【黄昏の夢】狩人の姉

 夢を見ている。


 青い空を黒い剣が黄色い人型を乗せて、ゆっくりと飛んでいる。


 =ナンバー20、あたしたちの活躍で世界は平和だわ。良い事ね?

 =ナンバー3、俺達が指令を果たす限りは相応の結果が約束される。


 黄色い人型が浮き上がり、黒い剣は停止する。


 =ナンバー3、どうした?作戦予定空域はまだ遠いぞ。

 =ナンバー20、あたしたちの平和はいつ訪れるのかしら?敵が居なくなった時?


 黒い剣は人型に成り、振り返って剣その物の目線で黄色い人型を見つめる。


 =ナンバー20、あなたはどう思う?どうすればあたしたちが平和に辿り着くか。

 =ナンバー3、全ての指令を果たした時、平和が訪れるに違いない。そう信じる。


 人型は黒い剣に戻り、元の通り進み往く。それに黄色い人型も追随していった。



 意識が浮き上がってくる。

 共感できる夢を見た。

 あの化け物でも、争いが終わることを望んでいる。

 争いの終わった後、あの黒い剣はなにをして過ごすのだろうか?

 いつもやっている運搬屋だろうか?

 イーグルの様にコンテナを括り付けた黒い剣を想像すると、親近感が湧いてくるので不思議だ。


 目を開けばすぐ近くの赤い眼と目が合ってどういう状況だ?

 俺は何か柔らかいものにに圧し掛かられていて、これは……

「二人ともおはよう~! 」

 おねえちゃんだ! 上からおねえちゃんの挨拶が降ってきて、湖の上で過ごすのは肌寒いので俺達の手を抱くだけでは寒くて二人纏めて抱いていたんだと思う。

 柔らかいものが離れていくのでそれぞれ起き上がり挨拶する。


「「おはよう」」


 ローズが早速、魔道具で呼び出しをすると、この宿でも暖かいタオルの山が出てきて、一つ違う点は温めの水の入ったコップが出てきたことだろうか?


 寝起きで喉が渇いていたので助かる。


 薄着越しに体を拭き、その後の朝食の席で焼き立てパンを頂いているとネグリジェの上からケープを纏ったローズが提案してくる。

「昨日は大群と戦ったからレベルアップが近いと思うわ。ダンジョン外だけど、魔物狩りに行ってレベルを上げてしまいましょう? 」


「たくさん、居たもんね~? 」とおねえちゃんは乗り気だ。


「正直助かる。イーグルの索敵で敵を探すのか? 」

 俺も疲労が抜けきっていないので、レベルアップで体力を回復する事ができるこの提案はありがたい。


「構わないわ。レベルは高ければ高いほど良いのだから」ニヤリとローズが笑うので同意な俺もニヤリと返す。「違いない! 」


 俺達はエルフ二人とベクターも誘って、装備を整え森へ魔物狩りに向かう。

 俺の新装備、サングラスのお陰でマズルフラッシュを軽減できるので俺も工場から持ってきた機械槍を装備している。


 おねえちゃんが与えられたユーザー権限は強力で、工場のコンテナどころか生産装備まで自由に持ち出すことが出来るのだ。


 軍需工場を好きに出来る……イーグルの言っていた勇者チェルシー軍というのも間違いでは無いかもしれない。


 宿の人に行き先を伝えて、イーグルの背に乗り出発だ!


 □複数のアンノウン発見だよ! 着陸します□

 と言っても、戦闘自体は下りてやるので早くもイーグルが敵を見つけ着陸する。


 魔樹の森の浅瀬で敵は小鬼が数匹……楽勝だ!


 小鬼がこちらを認めて棍棒を振り回して突っ込んで来る!


 ……?


 来る?


「「ア   ア   ア   ア   ! 」」


 前にも増して遅く感じるぞ!?

 このレベルになった後、初めて小鬼の突撃を見たけど機械槍みたいな装備を持たないC級は制圧してなくてもこんなものなのか……!


「ただの的ね」

 ローズが赤い機械槍を構えると3連射。

「ガ! ギ! グ! 」

 頭をなくした小鬼の体は倒れて消えた。


 その場には3枚の布が残されたので、俺が拾って背嚢に詰める。


「この調子で数を狩るわよ?」

「頑張ろうね?」

 近づいてきたローズの提案に一緒に来たおねえちゃんは俺を元気づけてくれる。


そのまま俺達は森の深部へと踏み込んでいく。


次々と発見される魔物を打ち砕き背嚢がいっぱいになる頃、銀の鳥が警告する。


□中型のアンノウン1発見! □

俺達の後から徒歩で着いてきている銀の鳥は何らかの方法でモンスターを見つけて案内してくれる。


巨体なのに軽快なイーグルの先導で発見したのはB級の豚顔で人型なオークだ。


大きな剣を握った強敵だが、おねえちゃんは自信満々で剣を片手にずんずん進んでいく。


「クロ〜、手伝って? 」

おねえちゃんの要望で機械槍を構えて、カエルの真似をして顔面を狙いバレルを展開した連射モードで先制射するとオークは顔を守り始めて脇が空く。

「ブオ!? ーー! 」

その横をおねえちゃんが通り抜けた。


オークの体は上半身だけズレて消えていき、その場にはマンガ肉が残された。


俺達の体がレベルアップに光り輝く!


 先程までの疲労が嘘のように全快して生き返った様な気分だ。


 魔導鎧を待機状態にしていたおねえちゃんの桃色の髪は煌めいていて、爽快そうに緑の目を細めて微笑んでいる。


 ローズは右手を握りしめて喜びを噛み締めていて輝く金の髪を払い、赤い眼で俺を見て言う。


「体力は戻った様ね。こんな機会は今しかない……! オーヴァシーに戻って泳ぎの訓練をするわ!」


泳ぎの訓練……?

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