第55話 【黄金の夢】出発の姉

 夢を見ている。


 黒い剣が着弾音がしないほど遠くへと、光弾を撃ち放つ金色の人型を乗せて飛んでいる。


 =ナンバー20、目標の撃破を確認した。 撤収しよう。

 =ナンバー4、了解した。 撤収を開始する。


 方向転換する黒い剣に乗っている金色の人型は続ける。


 =ナンバー20、調子はどうだ? ナンバー2とお前は忙しいからな。

 =ナンバー4、コンディション良好だ問題ない。


 金色の人型は黒い剣の上で座る。


 =ナンバー20、ならば良いが無理は禁物だぞ。

 =ナンバー4、大丈夫だ。 忙しいと言っても皆を運ぶだけだ。


 座り込んだ金色を乗せた黒い剣は、真っすぐに進み往く。



 暖かな夢を見た。


 あの化け物の事を心配する者がいる。


 ナンバーというのは仲間だと考えていいだろう。


 それより今は、現状からの脱出を図るのが優先だ。


 俺の上には何故かおねえちゃんが居て、俺の頬に頬を付けて抱きついている!?


 目線の先にあるコンテナの外では、虫対策の魔法具の光がキラキラと輝いて大活躍している。


「クロ〜?おあよ〜!」


 現実逃避していると俺が起きたことに気がついた、おねえちゃんの耳の近くでする挨拶がこそばゆい、ローズが密着がなんだと言っていたのを実践しているのか!?


「わ! わわわ!? 何やってるんだよ!? 皆がいるところでそういうのは駄目だよ!?」

「そうなの〜?」


 真っ赤になって静止する黒色の救世主に引き離されたおねえちゃんは、寒そうにしている。


 端に集めてある装備から、畳んであるおねえちゃんのワンピースをを渡して、俺はマントを羽織り朝の準備に外へ行く。


「おはよう、おねえちゃんはコレを着てね。 寒いから暖かいお茶にしよう」

「わかったよ〜、クロ!寒いから、お願いね〜」

「ふぅ、おはよう二人共、寒い朝はお茶だよ」


 まだ寝ている皆を起こさないように気を付けて、昨日のマンマルを保管している木皿を拾い、コンテナの内壁にある足場に足をかけ外に出る。


 外はイーグルが見てくれるので、片付けを後回しにして休んだため少し散らかっている。


 マンマルを机に置いたら、昨日汲み直した水筒の水と簡易茶をポットに放り込み、料理に使った魔道具を使って温める。


「いい朝だよ」

 お湯を温めている間に、楽しみにしているベクターと洗い物をしながら片付けをしていく。


「クロ〜?おねえちゃんも手伝うよ〜」

「私も手伝うわ。 昨日は片付けを後回しにしたからね」


 おねえちゃんはローズも起こして来て、二人共片付けを手伝ってくれるみたいで助かった、三人にお茶を出していると残りの二人も起きてきたので全員で片付けだ。


「諸君! おはよう!! 」「おはようなのだ」


 皆で片付ければすぐに終わって、机と椅子に昨日の残りのマンマル以外は片付けて朝食にする。




「忙しないけど森に向かうことを提案するのだ。 ここに居ても何も出来る事は無いのだ」


 食事後に空の皿を見てエテルナが切り出すと、アルテも賛成する。


「さっさとエリンの森に行こうか!お駄賃は同盟から貰えたし!!」


「忙しいだろうから、仕方ないね」

「復興後に描きに来たいわね」

「そうだね、おねえちゃん」

 おねえちゃんも理解を示し、ローズは今度来るつもりみたいで、もっともな事だと思うので俺も賛成するとベクターも頷く。

「あたし達は元を断つ事だけを考えれば良いんだよ」


 しばらく後、イーグルに乗り込んで飛び立つ俺達へ、クレイドルの住人達が手を振って見送ってくれる。


 ――銀の鳥様、助けてくれてありがとう!

 ――勇者様、バンザイ!

 ――花の騎士様、バンザイ!

 ――旅の無事を祈ってます!


 黒煙の止まった巨大な木の根の下では、復興の手を止めてこちらに手を振る人々が見える。

 おねえちゃんは、嬉しそうに手を振り返している。


 ドラゴンに襲来された為、木の根周辺は魔樹が倒れていて、朝のひざしが祝福するように照らしている。

 ひざしに照らされた、人々を守り切った木の根は誇らしげだ。


 



「橋の一部が崩落していて、わかりにくいけどあっちだな!」


 木の根を後にして、俺たちは魔樹の影で暗い森へとアルテの指揮で進んでいく。


 エリンの森への道中は代り映えが無く、イーグルの上にあるコンテナの中ではエリンの森についてエテルナが復習してくれている。


「エリンの森では果物……。小鬼並みの大きさの果物に手足の生えたモンスターが出るのだ」


 例の果物のドロップするモンスターにおねえちゃんが嬉しそうに笑い、口元に手を当てて喜んでいる。


「楽しみだな~!」

「チェルシー、油断は禁物だからね?」


 そんなおねえちゃんに、しっかりと才女が制止を掛けてくれているので安心だ。


「厄介な所は長い期間存在しているせいか、どのモンスターも魔法で攻撃してくるから、外のモンスターと同じと思っては危険なのだ」


 恐ろしい特性を持っている。

 流石は長時間生き残っているダンジョンで、やられて嫌なことをしっかりやってくる訳だ。

 そうしてしばらくエリンの森について聞いていると、魔樹の生えていない地帯が見えてきた。


「あれがエリンの森だよ! 僕らがついてるから庭みたいなものだけど! 理由があるから、ここからは徒歩でお願い! 」


 エリンの森だと言われた場所は、魔樹が避ける様にして遠巻きにしている以外は普通の木の森で、恐ろしい事にダンジョンにはとても見えない。


 そんな場所にイーグルから降りた俺たちは踏み込んでいく。



――あとがき――


ここまで読んでいただけて嬉しいです。

もしよければ、評価の★とフォローをよろしくお願いします。


 三章はでっかい木の森で大冒険しました。

 昔の遺物も残っていたりして、この世界には危険がいっぱいです!

 最後に出てきた巨大ドラゴンは、レベル十四相当ですので強力な武装やドラゴンキラーが居ないと絶望的な相手ですね!


 おねえちゃんと一緒なら大丈夫ですが! 


おねえちゃん達の冒険はまだまだ続きますのでお楽しみにして欲しいです。

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