永遠の森で休息を

果物の森の歓迎

第56話 【果樹楽園】収穫の姉

 魔樹の森に比べると明るくて、普通過ぎる森を進んでいくとイーグルが普通過ぎる森に何かを探知した。


 □アンノウン一体補足、大きすぎてバレバレですが、頭上で擬態しています! □


 二頭身の姉ちゃんが指差す先には人の頭位の真っ赤なリンゴが木からぶら下がっている。

 自然にぶら下がってるから無視してしまったけど、分かりやすいな!?


「へぇ~? あれが果物を落とす敵なんだぁ」


 おねえちゃんの目が爛々と輝いていて、余程楽しみなのかもう剣を抜いている!?


「あの状態なら不意打ちできるのだ」

「は〜い!とう!」

 エテルナの勧めもあって飛び上がったおねえちゃんは急にリンゴの大きな一ツ目が開いたのに驚いて後ろの木ごとリンゴを輪切りにしてしまった。


「わわ!? 何々~?」


 木の上部分と一緒に輪切りのリンゴが降って来て、俺達の目の前で落下に砕け散り消えた。


 残されたのはとても美味しそうな真っ赤なリンゴで、それを拾い上げたアルテが軽く土を払って齧り付くと瑞々しいいい音が聞こえて、美味しいと喜んでいる。


「やっぱりこれだね! とれたての果物をそのまま頂く!!うまい!!!」


 それを見ていたおねえちゃんは口先をとがらせて抗議する。


「アルテ、ずるいよ~!食べたかったのにぃ!」


 おねえちゃんの重大な抗議に対して、泥棒妖精は「ワハハ」と笑って弁解した。


「大丈夫、不意打ちしてれば魔法無し!まだまだいっぱい出てくるからね!!」

「その通りなのだ、森全体がダンジョンな上にここのモンスターは溢れずに擬態し続けるから、モンスターの数は異常なほどに多いのだ」


 そう言われてじっと観察すればアルテの擁護をするエテルナの言葉を補強するように、妙に大きなリンゴやオレンジが連なってぶら下がっている!?


「節操のない擬態だ。 隠れる気が無いんだよ」


 それを一緒に見ていたベクターもあまりに意味不明な擬態の仕方に、モンスターのやる気の無さを指摘して呆れた顔をしている。


「擬態している間は動かない上に、近づかなければ擬態は解けない……か、エルフがダンジョンで暮らしていける理由が分かったわね」


 ローズはエルフのダンジョン暮らしの秘密に気が付いたみたいで、二人に対して確認を取る。


「確認してもいい? 移住区だけをモンスターの居ない安全地帯にすることで、長期間のダンジョン伯をするのがエルフのダンジョン暮らしの方法だったのね」

「だいせいかーい! 僕らの先祖も妙なことを考えるよね? エテルナ?」

「不本意ながら妙な事というのには同意なのだ」


 それに対して森を出たエルフの二人は隠すこともしないで肯定して、先祖の行動のおかしさを共感しあっている。


「いつでも果物食べれるよぉ!良いことだよ~!」


おねえちゃんはエルフの先祖の考えに賛成みたいで、きっとエルフの先祖はよっぽどの強者で果物が大好きだったんだろう、おねえちゃんの様に!


「ブドウは無いかしら?」「あれだよ」


ローズもおねえちゃんの言葉に好物が食べ放題なことを思い出したのか、観察していた俺に聞いてくるので指を差して素直に教えてあげる。


「あと俺の分も頼む」

「仕方ないわね! 」


 オマケとばかりに俺の分のブドウを頼んで指差すと、才女は俺の指先に合わせて次々と機械槍で撃ち落とし、落下に藻掻く巨大果物の急所らしき巨大な目玉を撃ち抜く。


 ブドウの目玉は粒の一つだけにあるらしく、まるでブドウに混じって目玉が生っているようだった。


 このダンジョンは閉所では無いのでローズの機械槍捌きが大活躍して、反撃も無しにどんどん果物が積みあがっていく。


 物騒な収穫作業を楽しんでいるローズは拾ったブドウの土を払い楽しそうだ。


「良い所じゃない!これは楽しみになってきたわ」

「違いない! この先もこんなのが食べ続けられるのか」


 その言葉に俺もブドウを口に入れて同意する。


 収穫作業中にも地元民二人の案内で、俺達は魔樹の森ほどでは無いけど深い森を進んでいて、差し込む日差に目を細めて果物を摘まむ。


 □大量に居ますが下手な擬態ばかりで、ダンジョンは聞いてたのより安全ですね□


 歩いて付いてきているお調子者のイーグルはあまりに一方的な状況にダンジョンの事を勘違いしそうになっている。


「ここのダンジョンのモンスターは生き残り特化なのだ」

「そうだね!後は罠だ!!僕たちの先導が無くなったらヤバいぞ~!!!」



 地元民二人から怖い話を聞く、今まではそういったダンジョンには近づかないで、狭かったり暗かったりのギミック系ダンジョンばかりだったけど、予定通りとはいえ罠のあるダンジョンに入ってしまったのか……!


「私たちの歩いてる道は定期的にエルフが罠を無効化してるのだ」

「通り道は必須だから街道整備みたいなもんだね!」


 地元民の話に緊張が解けた、そういう事なら安心できる。


 罠の情報はいくらか聞いていて、戦闘中に掛かれば致命的だから出来るだけ関わらないようなダンジョンを選んできたが、何時までも逃げるわけにはいかない。



「皆には予定通りに罠の対策を学んでもらうのだ!」

 罠の無効化には自信があるのか、白鎧が胸を張る。

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