第63話 【突入計画】戦術の姉
少し整備された森林内を魔導車で走れば、行きと同じ様に乗客の俺達をシェイクしながら、村のおじいさんの家に到着した。
「イーグル君は固定具の作成に付き合ってくれ」
□いいですよ□
テント内に魔導車を停めたおじいさんは、並んでいる箱を開けては中に頭を突っ込んで、早速の材料探しを始めてしまった。
イーグルも固定具の作成に快く付き合うみたいで、おじいさんが箱に頭を突っ込むのを柔軟な首を伸ばし、興味深そうに観察している。
「おじいさんが固定具を作ってくれるなら、安心なのだ」
「あの様子じゃ、しばらく時間がかかるね!家で待とう!」
おじいさんとの付き合いが長い二人は任せるみたいで、アルテはさっさと家に帰るので皆でついて行く。
「確かにあの固定具は急場しのぎだったわ。 あんな魔導車を作成する人に、作ってもらえるなら、ありがたいわね」
「大きな機械槍もガッチリ固定されていて、凄い振動なのに緩まなかったから、期待できるね~!」
おねえちゃんとローズは、さっきまでの実演で安心した様で、おじいさんに任せる事に否は無いみたいだ。
俺としても、イーグルのコンテナは気になっていたので、腕に覚えのある人にお願いできるなら、ありがたいと思う。
イーグルが調子に乗った激しい機動の時に、嫌な音がしていたので……。
魔導車を駐車した物置に創作に夢中なおじいさんと、モデルの為に指名されたイーグルを置いて、柱の組まれた丈夫なテントの家に戻ってきた。
「まあクッションにでも座って、今後の事でも話そうか!」
勧められるままに低いテーブルを囲み、クッションに座ってアルテの司会進行で今後の確認をする。
「イーグルの活躍で予定より早くエリンの森についた! だけど、この森では飛んでいけないから、前倒し無しで進むよ!」
「避けれる敵は避けて行かないと、この森では保たないのだ」
ここまでは銀の鳥が飛行してショートカットしてきたけど、今後は徒歩との事。
予定通りに罠の対処を訓練するんだろう。
まさか、あんな脳筋なやり方だとは思わなかったけど、簡単な分何処でも通用するはずだ。
「果物食べ放題だ〜! ローズぅ!楽しみだねっ!」
「そうね!チェルシー!」
「楽しみだね!」
おねえちゃんとローズの二人は、果物が食べ放題なのを期待してるみたいで、俺も期待を隠すことが出来ない!
「飢えないで進めそうなのは、流石はダンジョンだよ」
「故郷で数少ない良い所! 戦えれば飢えない!」
この森の特性に蒼い眼を半目にして呆れるベクターへ、アルテが無い胸を張ってこの森の真理を語った。
「予定の前半は無事……僕達は無事に消化出来たね!!」
生きてる旧文明の遺構を発見したり、通り道の国家が炎上したりと色々ありすぎたけど、確かに俺達は無事だ……! ちょっとした負傷はしたが、エテルナの奇跡で回復している上、おねえちゃんに俺とローズはレベルアップによって全快だ!
「後半は、目標のドラゴンダンジョンがあるアギア共和国の南へ旅をするよ! 魔樹の森を抜けて、アギア共和国のある山に登れるけど、山越えは手間だからね」
山越えが手間だと言った後に、ベクターへ視線を向けるアルテ。
「山を東から迂回すれば内海に出れる。 シャドウナイトの秘匿戦艦で内海を経由して、アギア共和国の南に侵入、直接ドラゴンのダンジョンへ突入する作戦だよ」
戦艦とは、夢で見たあれだろうか? それその物では無いと思うけど、似せた物でも相当な物では?
秘匿と言う事は、隠してある戦艦を出してくるのか。
「ローズぅ! 戦艦って何~?」
「戦艦とは、金属で作られた船ね。 発掘品のコピー魔道具である魔導フロートによって水だけでなく、空中に浮いて巨大な魔導スラスターで移動するわ」
おねえちゃんが早速ローズに聞けば、嬉しそうにローズが答えた。
隠してあった空に浮かぶ船か……帝国の本気度を感じるけど、ドラゴンが集まりそうで不安だ。
「そんなのでアギア共和国に近づいて、ドラゴンは大丈夫なのか?」
「低空すれすれを飛ぶから大丈夫。 あたし達を投下したら、全速退避する予定だよ」
俺の心配事を確認すると、空を飛ぶ専門家に対して、要らぬ心配みたいで、対策済みとの事。
「かなり前倒ししてるから、戦艦が来るまでは内海の港町、モヌクルで過ごす事になるのだ」
「海辺の町で休息って訳ね。 いい絵が描けそうだわ」
エテルナが先に進めすぎた話を戦艦が来るまでの事に戻すと、ローズが絵を描く算段をつける。
行く先々に描く物があるので、ローズがオーヴァシーで画材を買い足したのは、正解だったらしい。
海辺はオーヴァシーみたいに魔樹が無くて眩しいはずなので、俺のサングラスが活躍しそうな場所だから、今から楽しみだ。
結局、おじいさんは夢中で作業していて帰ってこなかったので、それぞれに別れて眠ることになった。
このテントは所々に魔道具が設置されていて、一部おじいさん専用で使えないが、アルテも住んでいた時の名残でしっかりとコア付きの魔道具も設置してあって、便利な道具も多い。
「こうかしら?」
「おお!?」
「ローズ凄いよ~!」
金属棒にローズが手をかざしたら、水が出てきてタライをいっぱいにしたので、水汲み要らずだとおねえちゃんと二人、驚いた。
水を作り出す魔法の込められた魔道具らしく、便利さにおねえちゃんと一緒に水を出したり、止めたり、浮かれていると止められる。
「かなり魔力を食うから、ちょっと勿体無いわ。 魔法使いの家だからこその魔道具ね」
タライに出した水で体を拭くと、数回目で慣れてきたローズと手を握ってそれをおねえちゃんに抱かれての就寝だ。
「明日からの旅行も……楽しみだねぇ~」
「ええ、そうね……。 いい旅行だわ」
「そうだね、おねえちゃん……」
アルテに借りているテント内にあった寝具に包まり、三人で微睡む。
夢を見る。
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