第66話 創の連絡先 (渉視点)
あの後、お互いの創作の手順やこういう時はどうしてるか? とか、色々な話をして、かなり盛り上がった。
創作はある意味孤独だったりするし、人それぞれやり方も違う。
自信が無くなってしまうと、前にも進めなくなってしまう。
書き続ける為には本当にモチベーションが大事だったりする。
そんな風にお互いに腹に抱えている事を話したりしたら仲が深まってきた気がした。
そのノリでなんとか創の髪にドライヤーをかける様に促す事も出来た。
流石に恥ずかしがってタオルで拭いたりドライヤーをかけたりはさせてはもらえず創自身が自分でしていたが……。
そんなこんなで創作の話はお互いかなり為になったし、楽しかった。
創も、心の底から楽しいと言っている様な満面の笑みを浮かべて大きく声を上げて笑っていた。
声を上げて笑うなんて俺の日常ではあまり考えられねーが釣られて俺も声を出して笑った。
そうやって、仲間っぽい雰囲気に持ち込めたからか、なんとか俺の理性も抑え込む事が出来ていた。
だが、頑張って押さえ込んでいるというのに純粋になにも考えていない顔で、目を糸目の様に細めて笑うこいつを抱き込んでしまいたいぐらい可愛いと思うし、ちょいちょい頬を赤く染めて恥ずかしがる姿はやはり色気をまとっている。
実際は結構無理矢理抑え込んでいたと言っても良いかもしれない。
創作に関しては俺は例の初恋の女の子(まあそれは創の事だったんだが……)を探す為に始めた様なモノだったが、俺自身も気に入っていた。
創作サイトではコメントは気が向いた時しかしてねーけど、こういう所から初恋の(初恋とも気づいてなかったけど)あの子にいつ再会出来るかも分かんねーから俺はサイト内ではかなり紳士的な優男を演じていた。
まあ演技に関しては得意分野という所もあって、多分創作サイト内の奴らは普通にそれが俺だと信じているとは思う。
創の話を聞いていくと、創自体は創作サイトに自分の作品を投稿した事がないみたいだった。
それなのにこんなに長く書く事を続けているんだな。
それで、よく、モチベーションが続くよな。
まあ創はあの頃からずっと書いているみたいだし、書く事が息をする事と同じくれー当たり前の事だったりすんのかもな……。
「そのサイトって渉も書いたモノを投稿しているのか?」
随分と創の喋り方が砕けてきた様に感じて自分の頬が緩む。
「まあな。創は投稿したりしねーの?」
そう俺が軽く言葉を投げかけると、創は少し困った様に笑った。
「俺は……そういうのって、まだ投稿した事が、ないんだ」
その声は創らしくねーって言うぐらい小さな声で少し怖がっている様にも感じだ。
昔、小学生の頃の創はもっと自信に溢れていた気がする。
『いつか、作家になりたい、そう思っているんだ。内緒だよ?』
控えめだけどそう言っていた創はまっすぐ前を向いていた。
俺が知らない間に何か自信をなくす様な事を言われたりした事があるんだろうか?
まあこんな番組に出ようと思うぐらいだからそんなに自信がないなんて事もないんだろうが……。
創作サイトとかで投稿していると、誰かからの意見や、励ましのコメントをもらう事がある。
その言葉にはものすげー偉力がある。
天にも登る気持ちになる事もあればキツい言葉を食らうと立ち直れないくらい落ち込む事もあるだろう。
だけど、もし自信を無くしてしまっているなら、創にもあの時に味わう最高の気持ちも味わって欲しいとも思った。
「良いサイトとかやり方とか教えてやるよ。連絡先とか教えてもらっても良いか?」
そう俺が聞くと大きく目を見開いた創はズボンのポケットからワタワタと慌てる様にスマホを取り出した。
「え、えーと」
良いよとはっきり言われた訳じゃねーけど創の態度から連絡先交換する事は嫌ではないと読み取れた。
むしろ期待してしまいそうな態度だ。
こうして俺はなんとか創の連絡先をゲットできた。
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