第32話 外出課題開始(俺の視線の先) (創視点)
そうして出発した訳だが、宛ても無く歩く訳にも行かないし、何処に向かったら良いだろう?
「隣、歩いても良いですか?」
そう言って笑顔で話しかけてきたミユちゃんはやはり可愛らしい。
ミユちゃんも少しだけ変装をしているみたいで、いつも短めのスカートを履いている事が多いのに今日はシックなパンツ姿だった。
その言葉に応え様としていた俺だったが、ヌッと渉が横から入り混んできた。
「何処に行かなきゃ行けないって指定もないんだよな? 写真を撮るっていうのと、誰かの役に立つ事って言ってもざっくばらん過ぎて難しいよな」
ミユちゃんには軽くうなずく様に返事はしたが、渉は俺に話しかけてきたんだろうか?
俺の返事がワンテンポ遅れたからか渉の言葉にはミユちゃんが応えた。
二人の話を隣で聞きながら俺は久々の外の空気を堪能していた。
こうして外をゆっくり歩くのは気持ちいいな……。
何気なく過ごしていた時は中々そんな風に思えなくなっていたのに、なんだか、今日は子供の頃の気持ちに戻れたようなそんな解放感がある。
天気は良いし、歩道に沿って生えている木々から光が透けてキラキラして見える。
空の青さも雲の色も、朝の光が色々混じっていて綺麗だ。あっ、あの形の雲の、面白い……。
俺は歩きながらも目線は空に向けられていた。
「何をボーッとしているんだ。車も通っているんだし、歩道を歩いているといったってフラフラしていると危ないぞ」
そう言いながら渉に手を引かれた。
「サンキュー」
俺はビックリしながらそう応え少し目線を逸らし笑った。
その時後ろからシャッター音が響いた。
マモルがこちらにスマホを向けている。
俺達の写真を撮ったみたいだった。
俺はビックリしてマモルの方を見た。
そんなに広くない歩道を三人で歩くと言うのもどうかと思っていたし、渉も手を離してくれたので、俺は歩く速度を遅らせ後ろからついて来ていたマモルの隣を歩きだした。
「急にカメラを向けるのはビックリしたよ。試し撮りをしたのかい?」
「ああ、結構良い表情のが撮れたよ」
マモル君は今、撮った画像を今回の番組の共通アプリに早速アップしたみたいだった。
アップされた画像(写真)は俺と渉の他に隅の方にミユちゃんも写っていた。
渉が俺の手を引いていてミユちゃんが心配そうに俺達を見ている。俺は恥ずかしそうに顔を赤くし笑っているそんな画像。
三人の距離が近くとても仲が良さそうに写っていた。
「急に撮るのは反則だよ。は、恥ずかしいだろう」
俺の声が恥ずかしさから小さくなりそんな俺を見てマモル君が笑っている。
「それにしても渉君は積極的だよな、ミユちゃんに対しても自然に距離をつめてくるし、マモル君はミユちゃんと話さなくていいの? 」
「俺は別に……、こうやって見ているだけで良いんだ。創君こそいいの? ミユちゃん、創君の隣に居たいみたいだったのに……」
確かに頷いておきながらも、数分後には後ろに下がるなんて避けているみたいで感じが悪かったよな。
こんな風に街中を妹以外の女の子と歩く事なんて俺はあまり経験がない。
それにこんな俺でも、最近のミユちゃんの態度を見て、自分に好意を持ってくれていることになんとなくだが気づいていた。
だけど自分が気になっているのは別の奴だという事も最近は認めざるを得なくなってきた。
渉とミユちゃんは何が面白いのか楽しそうに笑っている。
そんな二人を見て胸がチクリと痛い。
俺の視線の先はミユちゃんではなかった……。
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