第33話 何故だか懐かしい......優しいアイツの顔 (創視点)
そう言えばマモル君はミユちゃんの事が好きなのに、今の状況って辛くないんだろうか?
俺は先程アプリにアップされたマモル君が撮った俺達三人の画像(写真)を見た。
良い感じに光が写り込み写真自体はとても良い仕上がりになっている。
だけど俺の表情はかなり情けないというか、笑い方もなよっちいと言うか、頬も赤いし、うろたえまくっている様にも見えるしとにかく、とにかく顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
俺の今のキャラ的に消してくれーなんて騒いだり出来ないけど、内心はそうしたかった。
そして、隅の方にはミユちゃんが写っていた。
マモル君は本当はミユちゃんを中心に撮りたかったんじゃないだろうか?
だけどもしかしたらマモル君は俺や渉に遠慮してしまっているんじゃないだろうか?
なんだか積極的になれない所とかちょっと引いてしまう所とか、マモル君はどうしても自分と重なる、だから余計に応援したくなってしまう。
「あのお店可愛いな」
ミユちゃんがそう呟いた時、渉が少しいらだった様に眉を寄せたのが、後ろから見ていても分かった。
「今日は何処にどういう風なルートで回るっていう指定もないし、息抜きに寄ってみるかい?」
俺の問いかけに渉は眉を潜めてミユちゃんの表情が嬉しそうに輝いた。
「マモル君、俺達はココで待っているから、ミユちゃんとそこのお店に行っておいでよ」
そう言いながら俺はマモル君に軽く笑いかけた。
マモル君は少し戸惑った様に表情を揺らしたが分かったと応えてミユちゃんと一緒に店の方に歩いて行った。
マモル君は固まっているロボットの様に歩く姿がぎこちない。
緊張している事が丸わかりで微笑ましい。
ミユちゃんは少し納得がいかない感じでチラチラとこちらを見ていたが、軽く手を振りながらお店の中に入っていった。
俺と渉は店の前の歩道の、斜め横に設置されたガードレールに軽く寄りかかり二人の店の中の様子を見ていた。
「こんな所に寄り道して大丈夫なのか?」
「まあ、こんな風に息抜きだって必要だよ。ミユちゃん、お店見つけた時、嬉しそうだったじゃん」
俺の言葉に渉は更に不機嫌になった。
きっと渉は責任感が強いのかもしれないな。
だけどたまには気を抜く事も必要だよ。
まあ、それは俺も渉にも言える事だけど。
その時、店から50メートル先にある歩道橋の階段の側で高齢の男性が買い物袋を3袋ほど抱えてフラフラ歩いているのが見えた。
足元がフラついているから見ていてハラハラしてしまう。
俺はミユちゃん達を待っていたのに危なかしく歩く高齢男性が心配で、いてもたってもいれなくなり早足で歩き出した。
後ろから渉の声が聞こえた様な気がしたが、それどころではなかった。
高齢の男性がつまづいた所でなんとか俺は追いつき転ぶ前に支える事ができた。
「すまないね、なんとか転ばすにすんだよ。ありがとう」
しゃがれ声の高齢の男性。帽子で頭は隠れているが歩き方や背格好、肌の感じからも、かなりの高齢に見える。
ぎこちなく笑う笑顔が可愛いらしい。
「いえいえ、転ばなくて良かったです。この歩道橋を上るんですか?」
高齢男性はどうやら、この細腕で大荷物を抱えてこの歩道橋を上り向こう側の道路に行きたい様だ。
別に課題の為にこの男性を助けようとしているわけではない。
俺は大好きだった祖父を思い出していた。
祖父はもう死んでしまったが、人よりも時間の流れがゆっくり目の俺と趣味や話が合って、俺は祖父の事が大好きだった。
高齢男性の荷物を持ち上げようとした時、俺に追いついた渉が「持ちますよ」と笑顔で言いながら高齢男性の荷物を三つ全てヒョイっと持とうとしたので慌てて俺も一つ持った。
荷物は一つでも思った以上に重たく、高齢男性の歩道橋を渡り終えた後の家までの道のりも心配になってしまった。
「そうかい? すまないね、助かるよ。今日は孫が昼から遊びに来る予定になっていて、嬉しくて買い込んでしまったんだよ」
恥ずかしそうに笑う高齢男性は本当に嬉しそうで隣を歩きながら微笑ましくなった。
「そいつは良かったな。だけどじいさん、家まではどれくらい歩くんだい? この荷物、一人で長時間持つのはしんどいんじゃないのかい? 家族が来る予定だったんなら買い物は家族が来てからの方が良かったんじゃないのかい?」
そう高齢男性に問いかけた渉の表情はいつも俺達に話しかけている顔とは違いとても優しくて……。
俺はその顔をどこかで見た事がある、そんな筈はないのに……。
何故だかそう思った。
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