第27話 俺ものぼせてきた(マモル視点)



 現在、非常に微妙な空気の中にいた。


 俺は今浴槽に浸かっている。



 右側には渉君が、左側には創君がいる。



 先程まで良く喋っていた創君だったが風呂に浸かってからはなんだか固まってしまったかの様に喋らなくなってしまった。



 透明な湯から透き通る様な白い肌の創君が見える。




 大きな眼鏡が曇っていて、目や表情は見えなくなってしまっているが、頬が少し赤く、目元は隠れているのになんだろう色っぽく見えてしまう。


 二人が喋らないから俺もドキドキしてきた。




 その時、隣から鋭い視線を感じた。


 渉君が俺を見ている。なんか怖っ。


 鋭すぎる視線に温かい湯船に浸かっているのに背筋がゾワッとした。



「な、何? 渉君は随分浸かっているよね? のぼせるよ。もう上がったら?」


「俺は長湯なんだ。気にするな」



 声もなんだかキツい気がした。

 渉君もミユたんの近くに良くいたからチェックはしていた。


 彼は少しワガママそうだが人当たりも良く一通り皆と話をしている様だったから創君程、警戒していなかった。



 そうなんだ? と俺が答えた時、創君が立ち上がった。



「もう、上がるのかい? ちゃんと浸からないと風邪引くよ?」


「俺はあまり長湯はしないんだ」


 俺が声をかけると、そう言いながら創君は湯船から出て足早に洗面所に向かって行った。


 創君の足首付近に大きな傷痕を見つけて少しドキッとした。


 そんな創君の引き締まった尻と細い腰の後ろ姿を見送ると、隣からは再び鋭すぎる視線があった。


「随分と仲が良くなったんだな」


「そう見える? でも創君ってああ見えて意外に可愛いよね。格好良く見えて実は可愛いなんてライバル的には手強いよね」


「あ、ああ、まあそうだな」


 なんだか渉君も思っていた人とちょっと違うかな?

 さっきまでキツい声だったが面食らった様に声が少し穏やかになった。


「渉君はココで気になる人、出来た?」

「さあな。どうだろうな」


「ミユちゃんの事は? 気になってるんじゃないの?」


「はー? あ、別に、可愛い子だとは思うけれどな。何、お前はミユちゃんの事が気になってるのかよ?」


 渉君が余裕を取り戻したかの様に嫌な笑い方をした。


「そ、そんな事、いってないだろう? でもミユちゃんは創君に夢中みたいだったね……今回、両思いがいないって発表された時、少し辛そうな顔してた。いつも創君の事、見てるみたいだったし」



「まあ、ミユちゃんを狙っているなら、今、声をかけるのが狙い目かもな」


「やっぱり渉君もミユちゃんを狙っているの?」


「お前はミユちゃんを狙ってるんだな」



 そう言って笑いながら立ち上がった渉君は少しだけフラつきながら浴室から出て行った。



 やはり少しのぼせたんじゃないか?



 だけど、いつの間にか怖い視線じゃなくなったし、声も柔らかくなった。


 何をきっかけに機嫌が治ったのか分からないがまあ良かった。

 渉君もあまり敵には回したら良くなさそうだ。




 それにしても創君、色っぽい腰してたな……。



 俺は先程の創君の白い背中や腰を思い出して、顔が熱くなった気がした。


 色白い肌に足首の似合わない傷痕がなんだか更に色っぽく見えた。



 な、何を考えているんだ俺は。


 創君の腰が、この前、オタク友達から借りたbl本の中の受けの男の子の腰みたいだからって……。



 本当に......、何を考えているんだ俺……。



 俺ものぼせてきたかもしれない。



 今日は一人部屋で良かった。

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