第28話 可愛いすぎる(シホの視点)


 創さんが部屋に戻ってきたと思ったら無造作にタオルで髪を拭いていた。 


 Tシャツも……すこし透けてるし。


 それにまだ髪も濡れている。


「あっ、創さん。髪、洗面所で乾かさなかったんですか?私、ドライヤー、ありますよ? 貸しましょうか?」


「ああ、大丈夫だよ。夏だし、自然に乾くだろう?」



 そう言いながら無造作にタオルで髪を拭いている。


 眼鏡がちょっとだけズレて大きな目も見える。


 格好つけている様にも見えるけど眼鏡がズレているのでマヌケっぽくも見える。



 可愛い。


 理想の受けね。




 そう、何を隠そう私は腐女子なの。


 腐女子、分かるかな?


 男の子同士のキュンキュンな恋愛の物語、ボーイズラブな物語を好んで読みまくる女子の事。




 私は今回は事務所から言われて仕方なくこの番組に参加した。


 私は読者モデルの仕事をしているの。


 と言っても私はモデルを実際目指している訳ではない。

 


 恋。


 をするのも悪くないけど、今、私にはそれよりも夢中になっている事がある。



 それは小説や漫画。



 つまり創作。



 私はblの世界に夢中なのだ。



 本当はこんな番組に出ている場合じゃない。

 書いて描いて書きまくりたい!

 

 でも小遣い稼ぎには丁度良いし、リアリティーショーには男の子も女の子も美形が多い。


 目の保養にもなるし妄想もし放題ってもんよ。




「お風呂場には誰かいましたか?」



「へっ! っっ」


 私の聞いた事に誰か居ましたと言わんばかりの反応。



 

 創さん、分かりやすっ。めちゃくちゃ声が裏返ってる。

 思わず笑いそうになっちゃったよ。


 本当可愛らしい。


 理想な受けすぎる。


 しかも、あの反応は浴室で誰かと一緒になったのね。



 誰と一緒になったんだろう?



 誰と一緒でも美味しすぎる。


 妄想にひたりすぎて思わず変な声になりそうなのを慌てて引っ込める。



 誰に会ったんだろう?


 なんだかリビングではマモルさんと急に仲良くなってたのよね。



 マモルさんはなんだか誠実そうだから溺愛攻めっぽいのよね。

 それとも渉さんかしら?

 渉さんはなんだか創さんと仲が悪そう。


 だけどそんな風にぶつかり合う二人がいつのまにかー、なんちゃって、理想のケンカップルだわ。


「お気遣いありがとうね。今日は疲れたから眠らせてもらうよ。シホさんも明日も早いんだし早く休んだ方が良いよ」



 そう言って創さんは私が喋るスキを与えないまま自分のベッドに潜ってしまった。



 私も大人しく自分のベッドに入り隣のベッドに潜り込んでいる創さんを見た。



 明日からますます観察が楽しくなりそう。



 でも創さん、そんなに髪が濡れたまま眠ったら風邪も引くし、寝癖もつきそう。



 寝癖がついちゃった姿も可愛いかも。


 創さん、本当に可愛いすぎる。




 私は腐女子友達に思いの全てをLINEした。



 電話して直接聞きたい、そう言う友達に腐女子がバレたらヤバいから無理と言ったけど、本当は私の方が電話したかった。



 この興奮を友達にぶつけたかった。


 


 

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