第2話 どうしてこんな事になったのか、妹が可愛いからか、俺がシスコンだったからか......。(創視点)




 そもそも、まあ友達は多いが基本は地味目な俺だ。

 周りと違うのは、小説を書くのが趣味で、いつか作家になりたい。


 読んで下さっかった方々の生き方を変えてしまう様な、その人に影響を与える様なそんな物語を書きたい。


 そう思っているだけで、それ以外はゴクゴク平凡な高校生男子だった。



 そんな俺、どうして、何がどうなってこんな格好でこんな所にいるのか......。








 きっかけは妹だった。







「お兄ちゃん。創兄ちゃん、宿題教えて?」



 語尾に♡マークでも着いているんじゃないだろうかと甘えた声をかけてきたのは、俺が目の中に入れても痛くない様な可愛い、可愛い妹だった。



「なんだよ? どれだ? 見せて見ろ?」



 素っ気ない口調で答えている俺だが、実際冷たく話せているか分からない。


 所詮俺はシスコンだ。



 普段、クラスの女子が友達にしか思えないのは、このアイドル級に可愛いらしい妹のせいに違いない。



 可愛らしく笑いながら俺が座っていた机の横に、自分が座る簡易的な椅子を持ってきている。


 だけど、ノートを広げてはいるものの、この可愛い妹は、何か俺に言いたい事が別にある様だ。



 チラチラっと俺の機嫌を伺っているのが分かる。



「なんだよ。言いたい事があるなら早く言えよ」


「あのね、お兄ちゃん、創兄ちゃんってさ、作家を目指しているんだよね?」



 そう光留(妹)に言われ、驚きすぎて思わず咳き込んだ。


 自分の唾で溺れそうになっちまった。


「な、なんの事だ?」


 しらばっくれ様とそんな風に返事をしていた俺だったが内心、額に嫌な汗をかいていた。



 光留には俺の趣味は一切言っていない。


 というか俺のこの趣味や夢はごく僅か、数人にしか教えていない。



 ど、どうして知っているんだ?


 ま、ま、まさか......。


「ごめんなさい、お兄ちゃん」



 と、謝りながらも、ちっとも反省した様子はない光留がニヤニヤと笑っている。


「な、なんだよ。なんで謝ってるんだ?」


「実はこの前、お兄ちゃんがいない時、パソコン見せて貰ったんだけど、チラッとだけお兄ちゃんが書いた小説? 読んじゃった。あと、日記みたいなのもちょっとだけだけど」


 てへっと、舌をペロッとだしながら光留は笑っている。


 光留が話す内容に俺は自分の耳を疑い、現実から目を背けたくなった。





 にっ、日記まで読んだだとーーーー!





 俺は思わず声を上げたくなったが、可愛らしい光留の悪びれない笑顔を見ると怒るに怒れない。



 それより日記まで読んだなんて、俺、変な事書いてなかっただろうか?



 だいたい日記は人に読ませる前提で書いていないし、どうしよう?

 大丈夫だろうか?



 ヒヤヒヤしながら光留の様子を伺う俺。


「それで? 俺が作家を、目指してるからってそれがなんだって言うんだ? 人に迷惑をかける訳でもないし勝手だろう?」



 そう強気に言い返してはいるが、内心俺は恥ずかしくて仕方がなかった。



「本題はそっちじゃないの! 私、お兄ちゃんの夢へのお手伝いをしたいなーって思って」



 そう言って俺に笑いかける光留は本当に俺と血が繋がっているのか疑いたくなるぐらい可愛いらしい。



 と、いくら俺がシスコンだと言っても、もちろん近親相姦ではない。



 妹は妹だ。


 もちろん守るべき存在だが、恋愛感情は微塵もない。



 まあ、最近、胸も成長し始めているみたいだし、薄着な格好で家の中をウロウロされると目のやり場に困る事はあるけど......まあそれは、俺が健康的な普通の男だから仕方がないことだよな。



 と、また話がそれてきてしまった。


 夢のお手伝い?



「なんだよ。俺の小説を読んで感想でもくれるのか? それともなんだ? 指摘でもしてくれるって言うのか? 止めてくれよ。夢を叶えるのは難しいとは分かっているが、まだまだ俺は諦めたくはないんだ。だけどお前に面白くないなんて言われちまったら俺は、流石に立ち直るまでに時間がかかりそうだ」



 頭の中で「お兄ちゃん、この話、意味分かんないんだけど」と呆れ顔で言う光留の顔を想像し身震いしちまった。



 想像しただけなのに、つ、辛すぎる。


「違うよ。ごめんお兄ちゃん、私が読むのは漫画専門。小説はちょこっとしか読めないからそういうお手伝いは無理なんだ。ごめんね」


 光留は悪びれもなく、少しだけ舌を出して笑った。

 



 光留の言葉に半分は残念だったが、半分はほっとしていた。


 そうか、俺の小説を読んだと言ってもほんのちょっとという訳だな。


 確かに今まで書いた小説の量はかなりあるものな。

 光留は文学少女という訳ではないし、まあドラマは見るのは好きみたいだけど、読書している所なんて見た事ないもんな。


「そうじゃなくて、コレ、コレだよお兄ちゃん」




 そう言いながら光留が見せてきたのはスマホの画面。


 格好良い男女が小さな画面上に映し出されている。



 これはリアリティーショーってやつだよな?





 光留、こういうの好きだよな。





 俺は別世界みたいであまり見た事なかったんだよな。

 年齢は俺と同年代か、ちょっと年上なのかな?


 男の子は本当に同じ人間か?

 ってぐらい格好良いし、女の子は別次元の人物ってぐらいキラキラしている。



 と、俺は画面を見た後、そのスマホを見せている光留の顔を見て、あっ、ここにも、別次元風に可愛い奴居たわと思った。


「それで、この番組が俺の夢と、どう関係するっていうんだ」


「ヘっ、へっ、へー、実はね、もう応募しちゃったの! ごめんなさい。だけどね。お兄ちゃんは、このうざったい前髪切って眉毛いじったり、ちょこっとだけ肌の手入れして毛穴汚れとか綺麗にしたら絶対、ぜーったい格好良くなると思うの! 私、お兄ちゃんが格好良いって皆にも分かって欲しいの!」



 そうか......。



 俺もシスコンだと思ったが光留も立派なブラコンだったみたいだ。


 だけどな? 光留? お前の目は節穴だよ。


 


 まあ応募した所で、こんなイモい男がこういうキラキラした人達ばかりの中に混じって撮影なんて、そんなオーディションなんて受かる訳がない。


 俺は、「本当は格好良い」なんて、そんな風に光留が思ってくれている事が嬉しくて、思わずニヤニヤしてしまっていた。



 まあどうせ落ちるに決まっているし、光留の好きにさせておくか......。



 そう俺は甘く考えていた。



 光留が応募していたリアリティーショーの内容や、募集要項もみもしないで俺は呑気に過ごしていた。



 そして、光留の言われるがままにしていたら、書類選考がなぜか通り、気がつくと、明日はオーディションになってしまっていた。



 な、何故だ?



 どうしてこんな事になった?

 妹が可愛いからか? それとも俺がシスコンだったからこんな事になっちまったのか?!

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