第51話 胸がモヤモヤする......。 (マモル視点)



 あの後、ミユさんの話をなんとかかわしリビングを出て今日泊まる部屋の前まで俺は来ていた。



 ミユさんは俺には自分の素を出しても嫌われないと思っているのかもしれない。


 それとも嫌われても構わないと思っているんだろうか?



 いい愚痴り相手になってしまっているとも言える。


 そんな俺達だが、今、ミユさんは俺の事を呼び捨てで呼んでいるし俺に対する言葉づかいもかなり砕けた喋り方になってきていて、距離感は周りからみたらすごく縮まった様に見えるかもしれない。



 まあ、俺の今日の態度を見るとミユさん自身も、俺がミユさんを好きと誤解をするのは当たり前だとも思う。



 確かに昨日までは一番気になる相手ではあったし、今でもまだ守らなくてはならない存在だとは思ってはいる。



 だけど……実際は昨日と違い俺のミユさんに対する気持ちは全然変わってしまっていた。



 


 俺は大きく溜息を吐いてから自分の今日泊まる部屋の扉を開けた。



 そこにはウロウロと歩き回っているウタさんがいた。




 そこいらの男の子達より格好良く見えるウタさん。



 それは見た目もそうだけどなんというか雰囲気とか立ち振る舞いが格好良く見えるんだ。



 今のウタさんはそんなウタさんらしくない動きだった。



 俺が入ってきたのに気がついていないぐらい取り乱しているように見えた。



「ウ、ウタさんどうしたの?」



 俺の言葉にびっくりした様にこちらを振り返ったウタさん。



 取り繕う様に表情を変えたけどもう遅かった。


「ああ、ちょっと風呂場に忘れ物をしてしまって、ロッカーになんだけど、もう男性が入浴を始めてしまっているみたいで……」



 そう言うウタさんはなんとかいつもの様にクールに振る舞っている様だけど、行動や言葉の端々に焦りが伝わってきた。


 忘れ物はよほど大事なものなのかもしれない。




「そうなんだね。俺もお風呂に入らなくちゃならないし、ついでに見てきてあげるよ」



「あ、ええと、でも……」

「いいからついでだし」


 困った様に考えるそぶりをしたウタさんだったけど俯きながらありがとうと小さな声で言った。


 俺の言葉にウタさんは安心している表情には見えなかった。

 余計なお世話だったかな?



 まあとにかく、風呂場に行ってみよう。


 もしかして昨日みたいに運よく創ともばったり会えるかもしれないし。



 その時、俺の脳裏に浮かんだのは創の白い肌と浴槽内でほんのり赤く色づいた創の顔、そして足首の傷だった。



 真っ白い肌に似合わない傷があって、なんだかそれが余計にエロく見えたんだよな。


 ってそんな考え方、俺はちょっと変態だろうか?


 



 腰も強く抱き締めると折れてしまうんじゃないかと心配になりそうな程、細かった。


 




 って、俺は何を考えているんだ。



 ブンブンと俺は頭を振る。


 そんな俺を不思議そうにウタさんが見ている。


 それにしてもウタさんは女性だ。


 なのに不思議とそんなにドキドキしない。

 見た目は可愛いさがスパイスされている様な格好良さ。


 好みではない。


 見た目の好みと言ったらミユさんだ。


 なのに……。


 その時脳裏に浮かんでのは創の無邪気な笑顔や昨日の風呂場の蒸気で少し赤くなった何処か色気を含んだ創の顔だった。



 ドキドキドキドキ。



 なんでだ?


 俺は一体何を考えてるんだ?




 俺はなんだか自分の考えがおかしく思えて気持ちを逸らそうと別の事を考え様と努力した。




 そう言えば昨日は創の他に渉もあの時間に風呂に入っていたよな。



 今日二人は同じ部屋だ。

 そもそも今日、あの二人は何故一緒に行動していたんだ?

 どうして俺やミユさんを置いて行ったんだ?



 先程話を聞き出したかったけどなんだかはぐらかされてしまったし。



 しかも今日の課題が終わってから、あの二人、なんだか雰囲気が変わったんだよな。


 なんだかあの二人こそ距離が縮まった気がする。


 なんだろう、この気持ち?


 俺、せっかくできた友達が取られたみたいで面白くないのかな?



 どうしてなんだろう?



 あー、分かんないけど胸がモヤモヤする。



 夕飯、食べすぎたのかな?

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