第36話 一体どういう事よ! こんな筈じゃなかったのに......。 (ミユ視点)
なんだか思うようにいかないな……。
「ミ、ミユさん、何か欲しい物が、あ、あったの?」
隣にはまあまあ長身でレベルの高いイケメン。
しどろもどろに喋る姿は可愛らしい。
私と喋って緊張しているのか、顔が引きつっている。
マモルさんってあまり近寄ってこないから私に興味ないかと思ってたけど、そうでもなかったみたいね。
目の前には可愛らしい雑貨が並んでいる。
店内は従業員四名、お客さんは十人弱とまあまあ賑わっている。
私は別にこの店に興味があった訳じゃない。
本当は創君と二人でココに入りたかった。
難しいかもだけど二人きりになれるかもって思ったのに!
実際はそんなに気になっていた訳でもない男の人と、こんな所で二人きりになっている。
まあマモルさんもイケメンだし、このお店の中のお客さんからもチラチラ見られているし、注目されているのが分かる。
でも違うのに!
私が思いえがいていた状況と全然違うよ!
創さんは初対面の印象より、意外にも実際は奥手みたいだと分かってこちらからアプローチしないと進展はなさそうだと思った。
だけど、創さんの事を狙っている女の子は表面的には居なそうに見えたのよ。
と言ったって私がそう思っているだけで、実際は違うのかもだけど……。
リアリティーショー番組内では恋愛に発展させようにもかけれる時間は少ないし、一緒に過ごす事のできる組み分けで中が進展するかが決まったりする。
今回のこの組分け、神様が私にくれたチャンスだと思った。
なのに……。
私の職業は声優。まあ脇役ばかりだけど……。
まだまだ新人だし、演技力はそんなにない。
頑張っているんだけど中々上手くいかなくて私はいつも不安をかかえていた。
声優になれたのだって自分で言うのもなんだけど見た目がまあまあ見れたのと、ちょっとしたコネがあったからだ。
だからなのかは分からないけど私の周りにはあまり友達もいない。
共演者とかスタッフとかも、男性は結構近寄ってはくるけど皆、私の身体や顔が目当てで、私自身を見てくれる様な人はいない。
だいたい事務所が恋愛NGだから本気で恋愛なんてできない。
隠れて恋人を作る事も可能だけど、私みたいにまだ実力が備わってないものが、そんな事をして、もし見つかってしまったら……。
考えるだけでも恐ろしい。
もちろんそんな環境だからって恋愛をした事がない訳じゃない。
高校は女子校だったけどある程度経験もある。
別にウブな女の子って訳でもない。
だけど、なんていうか私は今まで男運がなかった。
片思いしてやっと付き合えたと思ったら友達と二股されていたり、優しいと思っていたのに、付き合った途端、豹変する様なクズ男だったり……。
だけど私は別に自分の恋愛を諦めた訳じゃない。
今回このリアリティーショー番組はチャンスだと思った。
番組内では堂々と恋愛できるし、事務所から文句も出ない。
実際、番組が終わってしまったらその後はそれっきりなのかもしれない。
だけどお友達にはなれるかもしれないし、繋がりが持てればもしかしたら、長い人生のパートナーに発展する事だって可能だと思う。
私自身、どのくらい長く声優を続けていけるかも分からない。
私は良い相手、良い男との繋がりを期待していたんだ。
な、なのに……。
私はマモルさんの言葉に適当に相槌をうちながら、店の外で待っているはずの創さんや渉さんの方を見た。
見たんだけど……。
店の前に人がいる様子が見えない。
ココは店の中だし、少し見えにくい位置に二人はいるかもしれない。
私がココにいるのに二人が置いていく訳ない。
そう思うのに、嫌な予感が止まらない。
私は慌てて店の入り口まで早歩きで歩く。
そんな私にびっくりした様にマモルさんも着いてくる。
店の外には数人の人は居たけどやっぱり二人の姿はない。
ど、どういう事?
男二人で勝手に何処に行ったっていうの?
「あれ? 二人は何処に行ったんだろう? 何かあったのかな?」
そう言いながらマモルさんが顔を青くしている。
四人一組の組み分けだけど、ずっと四人で行動しなきゃ駄目って訳じゃないって太陽さんが言っていた。
でもそれは番組的には私を巡って取り合って尚且つその後に勝ち取った相手と二人きりにって流れじゃないの!
まだ合宿所から出発して、そんなに時間がたってないのに、何でイケメン二人で居なくなっちゃうのよ!
こんな筈じゃなかったのに……。
こんなのないよ……。
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