第4話 嫌な男。俺、ライバル視されている?(創視点)
そして、何がどうしてか分からないが、俺はあのキラキラした人の中を勝ち抜いた数人に選ばれて、この撮影現場に来ていた。
そうそう、光留の本当の目的は俺を格好良くする為ではなかったらしい。
光留が憧れていた役者志望の男性が、このリアリティーショーにでるから、どうにか俺を送り込んで仲良くなる様にしむけ、あわよくばソイツとお近づきになりたかったらしい。
まあ、光留の考えそうな事だ。
しかし、リアリティーショーとはやはり視聴者を楽しませなければならない。
今回の企画はコメンテーターも有名人だけではなく、著名人などもいるみたいだし、実はそれぞれ専門家も用意されているとの事、噂によると、俺の好きな作家先生も教える側で参加して下さっているとの事だ。
その事を聞き俺は、憧れの人に会える、しかも会話も出来てアドバイスまで貰える。
こんな夢の様な話、地味な俺の人生の中でもうないかもしれない。
俺はどうしてこんなキラキラした人達や信念が強い様な人達を差し置いて、オーディションに受かったのか、いまでも分からない。
だけど、もしかして、必死さが伝ったのだろうか?
光留が、俺が書いていた小説を何作かコピーして書類と一緒に送っていたなんて、この時の俺は知らなかった。
初回の撮影は一人一人の自己紹介。
俺は何故だかある男の事ばかり気にしていた。
その男の名前は高梨 渉。
幼い頃の記憶に残っている少年に顔が似ているというのもあるが、例の、妹である光留の憧れの奴っていうのもどうやらこの男の事らしい。
「中川 創さん? 聞いてます?」
そう先程から声をかけてくれているボブショートの可愛らしい女の子。
普段の俺なら、声すらかけて貰えないが、緊張した様に頬を赤く染めて話しかける様子は可愛らしい。
「ああ、はい。緊張しますね」
そう応えてはいるものの俺は上の空。
会話もあまり続かない。
こんな可愛い子と、こんな事がない限りもう会話も出来ないかもしれないのに。
そうだ。
一応、俺はココに恋というものをしに来たんだ。
俺は恋人いない歴年齢と言ったが、そもそも、恋じたいした事がなかった。
クラスの奴らがあの子が可愛いだのなんだの言ってはいても俺はそういう相手に出会えた事がなかった。
恋に恋をしているとか、男にしたら女々しく幻想を抱いていると言われてしまっても仕方ないのかもしれない。
俺は妄想が好きだ。
想像する事が好きだ。
だから恋にたいしても幻想をいだきすぎているのかもしれない。
女の子が少女漫画の様な恋に憧れるのと似ているのかもしれない。
俺ぐらいの年齢の男はやりたくて堪らない、そんな奴が大半を占めているだろう。
俺だって男だ。
その手の話に興味がない訳じゃない。
だけど、どうせなら初めては、自分が本当に好きだと思える相手と、自分の事を好きだと思ってくれる相手とヤリタイ、そう思うのは自然な事だと俺は思っていた。
「三浦さん? ええとあだ名はミウちゃんだっけ? こっちにおいでよ。美味しそうなお菓子もあるよ」
そう言って俺と話をしていたボブショートの子に話しかけてきたのは例の高梨 渉だ。
この番組の中では皆にワタルと呼ばれているみたいだ。
そしてボブショートの女の子はミウちゃん。
俺は名前をそのままソウと呼ばれていた。
皆、下の名前で呼び合っているんだ。
俺も高梨の事ワタルと呼ぼう。
いくら格好良くて有名な奴だろうと確か歳も変わらないはずだ。
ワタルはミウちゃんの手を引きながら俺の方を見て勝ち誇った様に笑った。
嫌な奴。
って、ああいうのを言うんだよな?
俺ははっきり言ってあまり男性に嫌われた事がない。
まあ、クラスの皆からは良い奴認定されていたし、見た目もまあ地味だし、ライバル視されていなかったって言ったらそれまでだけど.......。
だからこんな風に牽制って言ったら良いだろうか?
とにかく初めての体験だった。
ちょっとムカッとはしたけど、ワタルは爽やかイケメンだ。
こんな事がなかったらそれこそ一生関わらなかった人物だったかもしれない。
後、何故だか分からないが、渉がライバル視しているのは態度から見て俺に対してだけだった。
俺、しょっぱなから、何かやらかしてしまったんだろうか?
目を合わせた時からなんだか知らないが胸がソワソワしたんだ。
気にしすぎて、よく見ようといつもの癖で目を細めすぎていた事が、睨みつけている様に見えてしまったんだろうか?
光留の為にも仲良くならなくちゃいけなかったのに。
他のメンバーも男女共に格好良かったり可愛かったりする人ばかりだ。
皆キラキラしていて、本当俺は場違いだ。
なんとなくだけどワタルはカリスマ性があって、すでにこのリアリティー番組の出演者達のリーダー的存在になってきている。
俺、こんな中で恋なんかできるのか?
作家の夢も、叶える事ができるんだろうか?
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