第7話 目障りな男。らしくない俺(渉視点)
自己紹介。まずは印象づけることが必要だ。
コイツらがどう言うつもりで参加しているのか分からないが、少なくとも自分は恋をする為に参加した訳じゃない。
だがこのリアリティーショーの趣旨は、もちろん夢を叶える事のお手伝いも名目には入ってはいるが、こんな番組に参加したぐらいて、一握りしかなれない職業に就けるなんて、「夢が叶う」なんてありえない。
番組的にはいかに視聴者の注目度を集めるか、出演者に擬似恋愛をさせ視聴者を楽しませるかだ。
夢を叶わせる事が目的ではない。
その中で才能の種が見つかったら儲けものっといった感じだろうか?
だいたい、同じ目的、夢ばかりなら番組的にも成り立つのだろうが、参加者それぞれ目指す夢が違う。
どうやって番組を成り立たすのだろう。
まあ、俺としては、役者の卵として参加してはいるが、本来その職業を目指している訳じゃねー。
金に繋がる人、誰でも良いから、そんな出会いがあれば、そう思って参加した。
俳優の卵として参加していたのは俺だけだったのだろうか?
俺はそもそもテレビもほとんど見ない、まあ流行りのモノはある程度知ってはいるが、今まで俺は生きる事に精一杯だったから、呑気に生きている奴を見ると腹が立つ。
リアリティーショーとやらは今まで見た事がなかったが、一応、出演する訳だし、チャンスでもある。
俺はある程度は予習というか、何本かリアリティーショーの番組を見てきていた。
本当に恋をしている風に見せれるか分からないが、一応は役者の卵だ。
ある程度、夢中になっている様には見せれるだろう。
あの悩みの無さそうな見てくれが良い男。
中川 創の隣にもかなりレベルの高い女が声をかけている。
確か名前は......三浦 美海さん、あだ名はミウさんだったかな?
綺麗な着飾った女は見慣れているし、特に気になった訳じゃない。
俺はいつもは自分から声をかけたりしないスタンスだ。
そもそも人と関わるのは面倒くさい。
それでも日常をこなしていく為には、食ってく為にはそれも必要な事で、特に俺は、金を稼ぐ為に自分の容姿も利用しているから嫌でも関わらなくちゃならない。
だけど、プライベートで俺から声をかけるなんて、いつもの俺ならした事がなかった。
何故だろう?
何故、アイツを、中川 創を見ていると、こんな気持ちになるんだ?
らしくない。
俺がそもそも人の事をこんなに気にするなんて。
この、リアリティーショーも自分から声をかけなくても誰かが声をかけてくるだろうし、適当に恋をしてるフリでもしてれば良いと思ってた。
中川というあの男を俺はどうしてここまで気にしているのか......。
じっと睨んできていたからなのか......?
中川が三浦さんに笑いかける。
何故か、イラッとしている自分がいる。
中川が笑う度、あのチョコレートをくれた優しい女の子の顔がチラつく。
中川は、あの女の子の容姿とは似ても似つかないのに、どうしてこんなに重なって見えるのか......そもそも男と女、性別だって違うっていうのに、何故なんだ?
それも分からなくて無性に腹が立つ。
気がついたら三浦さんに、声をかけていた。
三浦さんの手を引き、振り返って中川の顔を見た時、奴は驚いた様に俺を見つめていた。
俺はなんだか気分が良くなって奴の顔を見て笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます