第69話 明日から......。 (ウタ視点)
マモルの足元にあるパスケース。
今、現在のワタシ(自分)の課題はどうやってアレをツムギに不自然に思われずに拾えるかだ。
ツムギが心配そうな顔でこちらを見ている。
時おり、マモルさんの事を睨みつけている様で、あんな怖い表情のツムギは、自分(ワタシ)は見たことがない。
やはり一刻も早くマモルさんの潔白を晴らさなければならないだろうか……。
可愛いツムギにあんな表情で見られたら自分なら耐えられない。
だけど……。
そんな事を言っている間にあのパスケースの中身を他の人やツムギ自身に見られてしまったら……。
考えるだけで恐ろしい。
うだうだと情けない思考を巡らせていた自分だったがそんな中に創さんと渉さんが入ってきた。
とりあえずワタシ(自分)とマモルさんそれぞれを別の部屋に移動させ事情を聞いた方が良いんじゃないかと創さんが言い出した。
というか今回の騒動も部屋の中の隠しカメラに映っているんだよね?
何故スタッフは何も言ってこないんだ?
もう寝てしまったのだろうか?
嫌そんなことはない。多分少し離れた部屋で今回の騒動を見て要るはずだ。
その人達には状況は分かっているだろうに、今回、自分(ワタシ)達の番組が全然恋愛としての動きがないから、きっとこのことから発展がないか狙っているのかも……。
くー、明日から番組が休みに入る。
このまま恋愛に動きがないと番組的にも困るのか?
というか、今のこの状況はもしかしてテレビで放送されてしまうのか?
いやいや、放送の日程はリアルタイムではない。
少しずれて行われるはずだ。
その時、自分(ワタシ)を取り囲んでいたメンバー達の壁の間から軽く頭を下げながら、長身の優男が入ってきた。
確かスタッフの一人だったはずだ。
その人がマモルさんは自分(ワタシ)を襲っていた訳ではない、カメラで確認が取れたと丁寧な口調で説明を始めた。
ああ、良かった。
ちゃんとスタッフも考えてくれていた。
そのスタッフの言葉で一番表情が和らいだのはミユさんだった。
もちろん、自分(ワタシ)も安心した。
やはり、自分が上手く説明できないせいで、マモルさんが悪者になるのは心苦しい。
集まっていた皆の表情が和らぎ、自分も小さく息を吐き、パスケースを拾おうとした時、先にそれを拾ったのはツムギだった。
慌てたワタシ(自分)は勢いよくツムギからパスケースを奪ってしまった。
しまった。
自分(ワタシ)が勢いよくパスケースをツムギから取り上げた様になってしまった。
「ごめん、ウタちゃん、大事なものだった?」
ツムギは全然悪くないのに、自分(ワタシ)はそのツムギの落ち込んだ様な声に上手く反応できず、下を向いてしまった。
何やってんだ自分(ワタシ)は、ツムギを傷つけたくはないのに……。
マモルさんの潔白は証明されたものの、そのまま同じ部屋というのもどうかとの事で、自分(ワタシ)は今晩は急遽一人部屋を使っていたミユさんの部屋に移り、この騒動は事なきをえた。
明日からツムギと一緒に過ごす。
そりゃ、一緒にずっと居れるのは、嬉しい。
離れていたら、色々と心配してしまうし、余計な嫉妬もしてしまう。
だだの幼なじみな自分なんかが、可愛いいツムギにそんな感情をもってはいけないのに……。
だけど、どんなに抑え込んでも自分の感情は止められない……。
明日から……、大丈夫だろうか……。
ツムギとぎこちなくなってしまうだろうか?
それに、こんな状態で、自分は自分の理性を抑え込む事ができるのか……?
自分は暗くなった部屋のベッドの中、まだ落ち着かない様に自分のスマホを眺めながら小さく溜息をついた。
リアリティーショーに参加した彼女いない歴年齢の俺が気になったのは〜生意気なライバル。そんな男に恋をした俺〜【BL】 やまくる実 @runnko
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