第3話 友達ができた!

「ドゥボダァチ!ダボゥ!」

「え、なに!? 今の音!?」


 ……言葉として認識してもらえなかったようだ。


「なにこの臭い、くさい……」


 今まで気付かなかったがどうやら僕は臭うらしい。


 もうダメだ……死にたい。


「誰か、いるの?」


 少女は怯えたように言った。今は目を開いているが、震えながらどこか虚空を見つめている。


 やはり彼女は目が見えないのであろう。


 そしてまじまじと見ると引くほど可愛いな。あと数年もすれば誰もが振り返る美人になることだろう。


「ドゥボ、ダァチ!」


 もはや僕は会話をすることは諦めて「ともだち」と鳴く無害な動物を演じることにした。鳴き方を工夫して感情を表現しよう。今は無害な小動物感を表現しているが伝わっているだろうか?


「なにがいるの……? 怖いよぉ……」

「ドゥボドゥボ。ドゥボドゥボ。ドゥボドゥボ。」

「……もしかして、犬?」

「ドゥボ!ダチァ!」


 どうやら伝わったようだ。安心だ。友達になれるなら僕は犬にでもなろう。なんだったら尻尾だって振る。尻尾がないからとりあえず触手をぶんぶん振り回しておく。


「よかったぁ。少なくとも悪い何かじゃないんだね。ごめんね、私今食べ物とか何も持ってないからあげられないや。」


 少女は安堵のため息をほっとついた。


 天使か。

 こんな状況で僕の心配をしてくれるなんてもはや天使以外にありえない。


「じゃあ、またね」


と言って彼女は川の方に歩いていった。水を汲むのだろう。


 僕はもう嬉しさのあまり転げ回りたい勢いだった。というか転げ回っていた。

 

 またね、だって! つまりまた会ってもいいということだ!


 転げ回るたびにニチャニチャと音がしたが構うものか。


 よし、決めた。


 今日から彼女のストーカーになろう。

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