第14話 やってしまった
かなり時間が掛かってしまったものの、僕はザクロのような実を発見した。
虫も寄り付いていたし、毎度おなじみのザコウルフでも試したが毒はなさそうだ。とりあえずこの実はザクロと呼んでおこう。そのまんまだけど。
ザクロをお手製台車で運びながら僕は思う。ミーナは喜んでくれるだろうか。喜んでくれるに違いない。ミーナの笑った顔が思い浮かぶ。
僕はミーナからもらった冠を見つめる。
今は仕方なく石の上に乗っけて運んでいるが、いつかこれを頭につけてミーナに会いに行きたいものだ。僕の体のどの部位が頭なのかよくわからないが、とにかくこれを普段から身につけていたい。
村に戻った時にはもうとっくに日も落ち、夜になってしまっていた。
なぜか今日は多くの冒険者を森で見かけたので、それを避けるようにしていたら無駄に時間を食ってしまったのだ。
冒険者たちは移動途中というよりかは、森で何かを探している様子だった。もし昨日のハンバーグ触手実験で姿を見られた僕が指名手配されてるとしたら厄介だ。
昨日の僕はどこかおかしかった。冷静ではなかった。もっとうまいやり方があったかもしれない。
いずれにせよ僕がこの辺をうろうろしているせいで、いつのまにか草を吸収して不毛の大地を量産しているので遅かれ早かれ問題にはなったことだろう。
ハンバーグ触手の衝撃で忘れていたが、石ころ犬アーマーを早めに作るべきだな、と僕は思った。
とりあえずミーナの様子をみて、まだ起きていたらザクロを1、2個あげよう。あのクソ男もいなければであるが。クソ男の目を盗んでミーナにザクロをあげるのは難しそうだ。シル婆にはあげてもいい。
クソ男がいませんように、と祈りつつ僕は窓から家の中を覗き込んだ。
――目に映る光景に頭が追いつかず、僕の動きが止まる。
クソ男はいなかった。
クソ男の代わりに、豚を2週間筋トレさせましたという風貌の男が下半身丸出しで酒を飲んでいた。
ミーナが床に転がっている。
服が胸元まで捲り上げられて、痩せ細った肢体が晒されている。ミーナはその格好のまま力なくうなだれていた。シル婆は家の奥で相変わらず寝ている。
……なんだこれ?
……なんだこれは?まずこいつは誰だ?前に村を
クソ豚ロリ男は酒を床に置くとおもむろにミーナの片足を掴んで持ち上げ、ミーナの股を開かせた。
「グフへ、舐めて綺麗にしてあげるよ……」
と豚が喋る。
ミーナはひっと声をあげる。
その後に小さな、掠れた声で、ドゥティと僕の名前を呼ぶのを僕は聞き逃さなかった。
――体が勝手に動いていた。
このクソ豚ロリ男が誰なのか、そんなどうでもいいことを考える間も無く、僕は窓を突き破り触手をクソ豚ロリ男の脳天に振り下ろした。
「グへ、おま……プギョベ」
僕の触手はクソ豚ロリ男の頭を破裂させ、胴体にめり込み、豚の小腸をズタズタ引き裂いたあたりで止まった。
あ、やってしまった、と思った。
ナメクジ大になったクソ豚ロリ男の脳みそが床のあちこちにへばりついている。ついに人を殺してしまった、と一瞬思ったが、今はそんなことよりミーナだ。
ミーナの方を見ると、震えながら身を縮めてごめんなさいごめんなさいと念仏のように唱えている。涙も流している。
「ヌェチャ」
と僕は声をかけた。
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