第24話 ミーナの体

 目が覚めると、実験室にもうノアの姿はなかった。


 僕の体の中には、ミイラのように干からびた鳥の死体や宝石など、見覚えのない色んなものが詰め込められていた。僕が気絶している間にも勝手に実験していたんだろう。


 僕は体内から邪魔者をブチュブチュと出しながら、目が覚めるって久しぶりの経験だなと思った。この体になってから睡眠は不要だったし、ましてや気絶なんてしたことがなかったからだ。犬アーマーの中に入り込んで、実験の結果を聞こうとノアを探す。


 城内を不審者のようにうろついていると、バルコニーでのんきに紅茶をすすっているノアを発見した。


 ノアは僕を見るなり「なにを寝とるんじゃ。」と呆れたように言う。誰のせいだと思ったが、別に痛みがあったわけでもなくむしろ快感に近かったのでスルーして、粘土板に「実験の結果は?」と書いてノアに見せる。


「最初に言った通りじゃったわ。そんなことよりミーナについて話があるのじゃ。」


とノアが言う。


「お前は救いようもない変態だからもう知っていると思うが、ミーナの腰にある魔法陣についてじゃ。」


 変態ではないけど知っている。というかあれはタトゥーとかではなくやはり魔法陣だったのか。


「ミーナが盲目なのは、おそらくあれのせいじゃ。」


 そうなのか……は?


 数秒、僕の思考が止まる。


 ……魔法陣ということはそれを使った奴がいるということだ。


 ミーナは人為的に盲目にされたのか?誰が?いつから?


「妾は攻撃魔法専門じゃから詳しいことはわからんのじゃが、あの魔法陣はミーナ自身の魔力を使ってミーナの視界を奪っておる。そのせいでミーナは魔法もろくに使えんじゃろう。」


 確かにミーナはノアに身体強化魔法を教えてもらっても、全然うまくいかずに「わたしって才能ないのかなぁ、あはは」と無理に笑っていた。それもあのクソ魔法陣のせいだったのか?わたしって本当に何にもできないなぁと言ってミーナが静かに涙を流したのもあのクソ魔法陣のせいだったのか?許せない。殺す。誰かわからないけどとにかく殺す。


 誰がやった?と震えながら粘土板に刻んでノアに見せる。ノアはそれを見て、「どうやってあの魔法陣を解除するのか考える方が先じゃないかの?」と言う。


 ……その通りだ。僕は怒りに任せて復讐することしか考えていなかった。本当にミーナのためを思うなら、まずは解除に専念するのがいいはずだ。ちょっと冷静になってきた。


「妾の旧い知人にそういった魔法に詳しい奴がおる。そやつに診せるのが良いじゃろう。近くまでいける転移魔法陣を用意してやる。少なくとも10年前はそこに住んでおったはずじゃ。」


 さすがノアだ。無駄に長く生きていない。何歳か知らないけど、本当に頼りになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る