第23話 僕の体
城に住み始めてから2週間ほど経過した。
一時期僕は盛大に
なぜ
「お前はバカなのか? 神にでもなったつもりか? もっとシンプルに考えるのじゃ。ミーナに惚れた、ミーナをいじめるクソをムカついたから殺した、それでいいのじゃ。環境が悪かったからそのクソ男に非はないみたいな思考を繰り返すとお前は感情を失うぞ。もっと自分の気持ちを中心に置くのじゃ。お前は目が見えない可哀想な女という環境にある人間なら誰でもよかったのか?」
ノアにそう言われた時、別にクソ男に非がないとは言っていないと反論したくもあったが、それが
――お前は目が見えない可哀想な女という環境にある人間なら誰でもよかったのか?
というノアの言葉が突き刺さった。
僕はミーナのことが好きなのだろうか?
……結局答えは出なかった。
そもそも、好きってなんなんだ?何をしたら僕はミーナを好きと言っていいんだ?もしくは、僕がどういう状態だったら僕はミーナを好きなんだ?
今僕はノアに呼ばれて実験室に向かっている。
ノアは僕の触手の一部をサンプルとしてむしり取ったりして、僕がなんの種族なのか、僕のこの体はなんなのか調べてくれていた。たまに魔法も教えてくれているし、暇人なんじゃないかと思う。さすが引きこもりだ。
なんでも僕の体についてわかったことがあるから、検証したいんだそうだ。
実験室のドアを開けると、中にノアがふん反り返って座っていた。
「お、きたか。結論から言うがお前の体はわずかでも魔力があるものは吸収し、全くないものは吸収しないと思うのじゃ」
とノアはない胸を強調するようにふん反り返り、足を組みながら言う。短いスカートの奥が見えそうだ……いや、見えた。さすが魔王、黒か。
「という訳で今から魔力があるものとないものをガンガン突っ込んでいくのじゃ。その石を脱ぐのじゃ。」
と言うので僕は羽根つき石ころ犬アーマーからニュルンと外に出ると、ノアは「こっちは魔石、こっちは普通の石」と言いながら僕の体内に石を突っ込む。
「おぉっ! 魔石だけ吸収されたのじゃ!」
とノアが喜ぶ。なんだか僕の体をおもちゃとして遊んでいないだろうか。
「こっちは普通の草、こっちは魔力を完全に抜いた草」と言いながら今度は草を突っ込む。
「やっぱりじゃ! 植物や生物はどんなものでも微弱ではあるが魔力があるからの。人工的に魔力を抜けばお前の体は吸収せんぞ!」
そうだったのか。それから次から次へとノアは僕の体内にいろんなものを突っ込んで嬉々としていた。
「さて、仕上げじゃ。妾が腕の魔力を完全に絶ってみるぞ。」
と言ってノアは僕の体内に右手を突っ込む。そのまま中をグチュグチュとかき回す。うひゃっ、気持ち悪い感触じゃとノアは言うが、僕も体内をかき回されるのは気持ちの良い感覚ではない。
ノアはそのまま僕の体内に浮かぶ球体の一つを握る。指の先で固さを確かめるように撫で回す。僕の球体に触覚があるのか分からないが、ちょっとくすぐったいかもしれない。
「この丸っこいの魔力を帯びていそうじゃのう。お前の魔力なら吸収しないんじゃろか。」
とノアは言う。
「どれが前に言っていたハンバーグ触手の元なんじゃ?」
僕はハンバーグ触手が生えてきた球体を、ノアの前にすすすと移動させる。
ノアはそのハンバーグ触手球体を握る。
――その瞬間、僕の体内に電気が走ったかのような衝撃が襲う。
わっ! ハンバーグ触手球体は触覚があるのか!
僕は思わずドゥブフォと声を漏らす。
「なんじゃ、この球体は触られるとわかるのか?」
とノアはハンバーグ触手球体をくすぐり始める。ノアの指の動きに合わせて僕の体は波となって広がったり縮んだりするような感覚に襲われる。ノアの手と僕の体の境界が曖昧になる。僕はノアの一部となる。
「ほれほれ」
ノアはいたずらっ子の表情を浮かべてくすぐり続ける。やばい、意識が飛びそうだ。これ以上は僕の体が持たないかもしれない。と思ったところで、ノアはくすぐりをやめる。
……次の瞬間、ノアはハンバーグ触手球体をギュッと力を込めて握り潰そうとする。
僕は視界がパァン!と真っ白に弾けて、そのまま気絶した。
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