第66話 母を探しに
「なんじゃ、嫌なのか?」
えぇっ! 全然嫌じゃない……ていうか、え? セックスって言った? セックスってあのエロ動画によくあるセックス? 僕の場合何を何にいれたらセックスになるんだ? 触手か?
「そうか、嫌か。じゃあ仕方ないのう。」
と言ってノアはふいっと城に戻ろうとする。
僕はバチュン!とクソダサアーマーから抜け出してノアの前にひれ伏した。誠心誠意、僕がどれほどセックスしたいかを行動で示した。
ノアはそれに答えて、ひれ伏す僕にそっと手を伸ばす。
――ノアの指先が僕に触れる。
その瞬間、僕の体が爆散した。触手や胴体はすべて吹き飛び、ソフトボール大の球体だけが地面をころころと転がる。
何が起こったかを理解するのに時間を要した。
僕の眼球も転がるので世界が回る。大樹ハウスやノアが回転している。僕の眼球は適当な岩にコツンと当たって停止した。ここからだとノアのパンツがかろうじて見える。
「……ふんっ、お前にはまだ早いのじゃ。童貞を卒業してから出直すのじゃ。」
童貞を卒業するために童貞を卒業しないといけないとはこれいかに……と、転がる球体になった僕は考える。
それにしても僕はこんな状態になっても生きてるのか。生物なのかすら怪しくなってきたな……。
ノアは僕の球体を全て拾い、魔法でくっつけてネックレスにすると自分の首にかけた。
「ドゥティ、
とノアは言う。僕は芳香剤からもらった発声魔道具も失われたので、有無どころか何も言えない。
「
と言ってノアはどこからともなく封筒の束を取り出す。
ノアの母上とな。僕はいつぞやギルドで、先代魔王が指名手配されていたことを思い出した。
「母上は異世界人との間に
ノアは淡々と喋る。
もとの世界の感覚では生まれたばかりの子供を置いて、しかも魔王という座を押し付けて旅に出るなんてひどい両親だと思うが、異世界で、しかも魔族だとよくあることなのだろうか。
「なんでもこの世界から童貞を無くすために幼い少年を襲う旅らしいのじゃ。」
……。
すげえ両親だ。
ん? 父親も少年を襲うのか? なんか色々とヤバそうだ。さすが魔王家系ともなると常識では測れない。
あれ、そんな両親に会いに行くって、も……もしかして、ノアの母親で僕の童貞を卒業させるってことなのか? いきなり高度すぎるだろ……。p○rnhubかよ……。それとも父親? 父親で卒業は勘弁してほしい……。
「……なにか、変な想像をしておるようじゃが、母上には
じゃあ僕はなんのために行くんだ?と思っていると、ノアがマミーに声をかける。
「マリー! 聞こえているか? 城のことは任せたのじゃ! 勇者がまた来たら適当に追っ払え。ミーナやその他大勢のことを頼んだぞ。」
『はーい。』
どこからともなく、城内のどこかにいるはずのマミーの声が聞こえる。テレパシーか何かの魔法なのだろう。
『ドゥティさん、ノアのことよろしくお願いしますね。あんなこと言ってましたけど、ノアも処女ですから、お手柔らかに。』
とマミーが言う。
「なっ、マリー! 余計なことを言うな!」
とノアがあわてて赤面しながら叫ぶ。
なんだ、こいつあれだけ偉そうなこと言っておきながら、ただの耳年増だったのか……。
「ま、まあよい。」
と言ってノアは腰を深く落として跳躍する姿勢を取る。
同時にノアの足元に魔法陣が展開される。
え、もう行くの? こんな姿になっちゃったし、ミーナやクルルにも一言残し……
「――行くぞ。」
ノアの跳躍と共に岩山全体が揺れ、大樹ハウスからバッサバッサと鳥が飛び立つ。
空を駆け
あっという間に城や大樹ハウスが米粒よりも小さくなる。
なんてスピードだ。なんだかんだノアは凄いやつだ、と思っていると、
「あ。」
とノアが言うが早いか、球体ネックレス、つまり僕が千切れてあちこちに降り注いだ。
あ。なんてこったい。
急いでノアがかき集めてくれるが、僕のハンバーグ触手球体が、結局最後まで見つからなかった。
ノアめ……貸しにしといてやる……。
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